(※写真はイメージです/PIXTA)

平成バブル崩壊以降の長期低迷期、「ゼロ成長」と「ゼロ金利」に苦しめられつつ、今日までなんとか頑張ってきた銀行。一般の方々からは見えにくい銀行の実情と、いまのビジネス展開に至った背景、そして今後の展望について、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

経済がゼロ成長だと、銀行の貸出は減る

経済成長率がゼロということは、日本全体の生産量が前年並みということであり、平均的な一般企業にとっては前年並みの売上、前年並みの利益です。増益にならずに残念ですが、とくに苦しいわけではありません。

 

しかし、一般企業が昨年並みの利益の中から昨年並みの配当をして、残った資金を銀行借入の返済に使うと、銀行の貸出残高は前年より減ってしまいます。経済が成長していれば、企業が増産のための設備投資をするので銀行からの借入を増やしてくれますが、ゼロ成長だとそれが見込めません。

 

古くなった設備を新しいものと入れ替える「更新投資」はゼロ成長でも行われますが、その分の資金は「減価償却」で賄われるので、銀行借入にはつながらないのです。

 

「100万円の設備機械で100万個の製品を作るとして、製品1個あたり1円分ほど機械がすり減るので、その分を製品価格に上乗せ→機械が壊れるまでの間に上乗せ分が100万円貯まる→そのお金で新しい機械を買う」というイメージですね。

 

銀行は、貸出残高を維持するために他行から客を奪おうとします。つまり、金利を引き下げるわけです。しかし、他行も顧客を奪われないように金利を引き下げるので、結局貸出残高は増えず、貸出金利が下がるだけに終わります。

 

牛丼店の値引き競争であれば、ラーメン業界から顧客を奪って来ることで両店とも増益になる、という可能性もありますが、銀行の場合は他業界から客を奪って来ることが難しいので、苦しいのです。

ゼロ金利だと、銀行の預金部門のコストが無駄になる

通常時の銀行は、預金を集めて資金を他行に貸すことで利益を稼げます。預金金利の方が銀行間金利より低いからです。預金で集めた資金を貸出に使う場合も、「預金がなければ高い金利で他行から借りる必要があったが、それがなくなったのは預金部門のおかげだ」ということになるわけです。

 

しかし、ゼロ金利時代だと、預金を集めなくても他行から借りてくればよいので、預金部門のコストはそのまま赤字要因となってしまいます。

 

では預金部門を解散すればいいかというと、それは無理でしょう。一度預金部門を廃止してすべての顧客の口座を解約してもらうと、将来銀行間金利が上昇して預金部門を再開したときに預金客を集めるのが大変だからです。

 

もうひとつ理由があります。銀行は、貸出先の預金口座を凝視する必要があるからです。貸出先の預金口座に順調に売上代金が振り込まれていれば、銀行は安心して貸出を続けることができますが、売上代金の入金が減り始めたら、銀行は融資を続けるか否か検討する必要が出てくるからです。

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