住宅ローンと投資用ローン、金利が大きく違うワケ
しかし「住宅ローンで不動産投資」という行為は、今回の詐欺罪での逮捕からもわかるように、許されない行為です。
金融機関からすれば、借り入れ目的によって金利を変えている理由は、貸し付けた際のリスクに起因するものです。同じ「5,000万円」の融資でも、「住宅ローン」と「不動産投資ローン」では、まったく異なる前提に立っているといえます。したがって、住宅ローンとして貸し付けたつもりの銀行からすれば「騙された」という話になるわけです。
住宅ローンと投資用ローンで大きく金利が違うのは、
①住宅ローンは国民の居宅の確保のため、政策的に低めに設定されている
②住宅ローンを支払わなければ自宅がなくなってしまうため、未返済のリスクは低い
③不動産投資は住宅ローンに比べて貸し倒れリスクが高いため、金利も高い
等が、おおむねの理由といえるでしょう。
投資初心者「すごい裏技がありますよ!」などと勧められ…
じつは、このような事情を知らない不動産投資初心者の場合、怪しげな不動産会社や不動産コンサルを名乗る人物に「すごい裏技がありますよ!」などと勧められ、まんまと罠にかかってしまうことがあるのです。
ただし、この詐欺行為において注意が必要なのは、被害者は「金融機関」であり、詐欺罪の実行犯は「不動産会社」と「借入を起こした本人」になるという点です。「借入を起こした本人」に、自宅を所有するための住宅ローンを不動産投資目的で利用したという認識があれば、詐欺罪に問われても致し方ないといえるでしょう。現実になれば絶望的です。
不動産会社や不動産コンサルがこのような不法行為に手を染めるのは「不動産の売却益や不動産売却による仲介手数料を稼ぐため」という、極めてシンプルな理由です。
投資初心者の方は、今回のような「裏技」や「抜け道」として勧められる不動産投資の話には、十分な注意を払っておく必要があります。
とはいえ、刑事罰を課すために起訴するかどうかは検察庁の裁量で決めることです。不動産会社や不動産コンサルが実刑になっても、ローンを利用した本人は不起訴…というケースもあるかもしれません。しかし、「詐欺罪」に問われるリスクは間違いなく存在します。
不動産投資に興味のある初心者を騙して、このような詐欺スキームに巻き込む事例はあとを絶ちません。不動産投資に興味がある場合も、おいしい話には重々注意のうえ、事前に勉強してから挑戦することが大切です。
(※守秘義務の関係上、実際の事例から変更している部分があります。)
山村 暢彦
山村法律事務所 代表弁護士
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