会社員から個人事業主へ
私がサラリーマンを辞めたときいちばんに感じたのは、「生きているだけでお金がかかる」ということ。加えて、その手続きは煩雑でよくわからないこと。
サラリーマン時代は、手続きはすべて会社がしてくれていました。健康保険、介護保険、国民年金、住民税など各種税金は給与から天引きされ、年末調整の書類を提出すれば税金も過不足なく収めることができ、時に戻ってくることさえある。手続きでわからないことは会社の問い合わせ先に尋ねれば教えてくれるので、困ることはありません。
退職後、雇用形態を問わず、ほかの会社へ転職するということであれば、とくにむずかしいことはなかったでしょう。しかし「自分のペースで仕事をする雇われない生き方」を選択した場合、生きていくために必要な手続きはすべて自分でおこなわなければなりません。
必要なことは何か?
どのようなことを知らなければならないのか?
どこに尋ねればよいのか?
わからないことがわからない状態となりました。
家族構成や、辞めたあとの仕事の状態などで事情はそれぞれ異なるので、「自分の場合はどうすればよいのか」を調べながら考えていく必要があるのです。いろいろな選択肢があるため、「選択の仕方で損はしたくない」と思うと、これからの生き方や働き方をどうするのかまで考えなければならず、けっこう頭を悩ませました。
私は「息子の中学受験に伴走するため、退職後の1年間は仕事をしない」と決めていたので、考える起点は「1年間は仕事をしない。その後は子育てに合わせて自分のペースで個人事業主として仕事をする」「夫はサラリーマン、2人の子どもは夫の扶養という家族形態」でした。
健康保険・年金をどうするか?
退職するタイミングで考えなければならなかったのが健康保険です。
任意継続という制度があり、退職後最長2年間は自分で掛け金を払うことで、いままで勤務していた会社の健康保険を使うことができます。在職中は掛け金の半分を会社が負担してくれていましたが、退職後は全額自分で支払うことになるので、それなりの金額です。
国民健康保険に加入するのがよいのか、夫の扶養に入るのがよいのか……。そこでまた考える必要が出てくるのが、失業給付金の存在です。給付にはさまざまな条件があり、年齢や退職理由などによっても給付される金額や期間が変わります。
夫の扶養に入るためには、失業給付金が向こう1年間で130万円を超えないことが条件。扶養に入れるかどうかの判断の仕方は、それぞれ加入する健康保険組合によっても変わります。失業給付金の金額はおおよその目安はわかりますが、最終的な金額がわかるのはハローワークに行ってからになります。そのような不透明な状況のなかで、いざ夫の扶養に入ろうと思ったら入れない、となることは避けたかった。
また、国民健康保険は掛け金の算出根拠がよく理解できなかったこと、病院にかかる以外のサービスが一切ないことから、私はいままで加入していた健康保険組合の任意継続を選択しました。
国民年金も同じこと。3号として夫の扶養に入れるのかどうかの判断は、失業給付とほぼ同じ。
このように、生きていくだけで必要な手続きがあり、払うお金もそれなりの金額であることに戸惑いながら、世の中の仕組みがわかっていくことはおもしろいものでした。