今後ますます広がる教育格差
日本の義務教育課程には、日本全国どこへ行っても同じ水準の教育を受けられるメリットがあります。初等教育純就学率はほぼ100%の状況で、子どもたちの教育は一定水準担保されているといえるでしょう。
小学校・中学校で導入されている給食は、栄養面だけでなく、子どもたちの楽しみや食育にもつながっていて、世界的に見てもかなり優秀なものといえます。
しかし、このように恵まれた公教育があり、経済は低迷が続くというのに、大都市圏を中心とした一部地域ではありますが、小学校受験や中学校受験をする人数は微減・微増をくりかえしているのです。
私は小学校受験塾の講師として年長クラスを担当し、毎年多くのお子さまを志望校へと送り出しています。そこで保護者に必ず伺っていることがあります。「なぜ、小学校受験をなさろうと思ったのですか?」と。その理由はさまざまありますが、共通していえることは「子どもをよりよい環境のなかで育てたい」ということです。
近年では求める環境が多様化しているように感じます。2000年代ごろまでは、「伝統校に入りたい」「受験はもうさせたくないから、大学まである小学校に行かせたい」と考える家庭が多かったです。
2010年代に入ってくると、中学受験を目指す小学校や、机上の勉強だけでなく体験や本物に触れる機会の多い小学校など、特徴ある教育を打ち出している学校の人気が上がっていきました。以前は母親が仕事をしていると不利ともいわれていた小学校受験ですが、女性の就業率が上がったいまは、共働きの家庭でも無理なく通わせられる仕組みのある学校が増えています。
中学受験では「難関校」と呼ばれる学校の人気は相変わらずですが、いままで名前も知られていない学校でも桁はずれの志願者を集めるところが多々あります。親がそれぞれの学校の特色をよく見極めて、我が家にとっての価値、我が子にとっての価値を見極めるようになったからではないでしょうか。
お金がかる私立学校だけでなく、国立や公立学校にもそれぞれ特色ある教育をおこなうところが増えつつあります。公立でも小中高の一貫校や中高一貫校が出現。ほかにもインターナショナルスクールや多様な形態のフリースクールなどもあります。
就学年齢になれば指定された小学校・中学校へ通うといった、義務教育を中心とした一斉型の学びの道筋から、我が家の教育方針を軸とした学びの選択をする世の中へ少しずつ変化していることを感じます。
親として子どもが過ごす場や学びの場を主体的に考えるかどうかで、教育格差はこれからますます広がっていくことでしょう。
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