(画像はイメージです/PIXTA)

老後資金を増やす手段として知られる、年金の繰下げ受給。しかし、場合によっては、繰下げ受給が不利になるケースもあるなど、単純な話ではありません。今回は、年金の繰下げ受給の失敗事例について、FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

その2:年金額の増額で、税金&社会保険料がハネ上がる!?

生徒:ほかに繰下げで不利になることはありますか?

 

先生:繰下げ受給で年金額が増えると、税金や社会保険料の負担が重くなることもあります。

 

生徒:そんなばかな。なにかの間違いでは?

 

先生:ハハハ。間違いではありませんよ。所得税は、所得が高いほど税率が上がっていく累進課税方式が採用されているので、年金額が増えると適用される税率が上がってしまうことがあるのです。

 

生徒:ひええ!

 

先生:同様に、健康保険料や介護保険料も増えることになります。そもそも、少子高齢化で年金財政は厳しいですから、5年後の社会保険料は、いまより上がっている可能性があります。将来的に年金は減らされることはあっても、社会保険料や所得税が減ることはありません。

 

生徒:それならいっそ、早い段階で受け取っておいたほうがいいかも…(涙)。

その3:年金額の増額で、医療費の自己負担割合が高くなる!?

先生:不利な点はまだあります。医療費が重くなることです。繰下げ受給によって年金額が増えると、病院の窓口で支払う医療費の自己負担割合が高くなります。75歳以上の後期高齢者医療制度では、所得145万円以上になると自己負担割合が3割になってしまいます。年金額が42%増えても、医療費の支払額が増えてしまうと意味がありませんね。

 

[図表1]70歳以上の所得ごとの医療費自己負担

 

生徒:私は高血圧の問題があるので、定期的な病院通いは必須ですし、高齢になれば、ほかにも持病が増えるかも…。自己負担割合が3割になるのは苦しいです。ですが、高額療養費制度がありますよね? それで取り戻せるのではないでしょうか。

 

先生:確かに、健康保険には、毎月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合にその超過分を払い戻してもらえる「高額療養費」という制度があります。しかし、年金額が増えて課税所得が145万円以上になると、高額療養費の上限額が1.4倍に上げられてしまうのです。

 

[図表2]70歳以上の所得ごとの高度療養費の上限額

 

生徒:えええ…それはツラ過ぎる(号泣)。いろいろなことを、総合的に考えなければいけませんね。ありがとうございました。

 

 

岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

 

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「基礎年金・厚生年金繰下げ受給」失敗事例!繰下げ受給が引き起こす悲惨な老後

 

 

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【老齢厚生年金】繰下げ受給すべきか!?在職老齢年金をもらうのはどうか?【FP3級】

 

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