父が危篤、母と兄は隠れて相続の相談ばかり、弟は蚊帳の外…
40代会社員です。以前より入院していた70代の父の病状が悪化してしまい、余命いくばくもない状態です。父は大手企業の管理職だった人で、都内に戸建ての自宅があるほか、預貯金などそれなりの資産があるはずなのですが、母と兄は「お前には関係ない」といって2人でコソコソ相談してばかりで、私にはなにも情報を教えてくれません。まったく納得できないし、イライラしっぱなしです。相続の基本的な考え方や、手続きの流れを教えてください。
千葉県流山市 40代会社員
法定相続人と法定相続分
人が亡くなった場合、その人が持っていた財産は相続人に渡されます。相続人とは、主に配偶者や血縁者を指し、法律によってその順番が定められています。この法定相続人とその取り分を示す法定相続分には明確なルールが存在します。通常、遺言がない限り、相続財産は法定相続人の話し合いによって決めた割合で分配されます。
遺言がない状況では、相続人同士の話し合いによって相続の詳細が決まることもありますが、合意に至らない場合は民法に定められた法定相続人が相続します。法定相続人には配偶者、子ども、親、兄弟姉妹が含まれ、特に配偶者は必ず相続人になります。相続の優先順位は、まず子ども、次に親、そして兄弟姉妹と決まっています。
もし本来の相続人が亡くなっている場合、その人の子が相続権を得ることがあります。これを代襲相続と言い、例えば亡くなった子の孫や兄弟姉妹の甥や姪が相続人になる場合があります。
相続分は、相続人が承継する財産の割合を意味し、法律により指定相続分と法定相続分が定められています。指定相続分は遺言によって決められた相続分で、遺言がある場合はこれが優先されます。法定相続分は、遺言がない場合や遺産分割協議の目安となるもので、相続人の順位や数によって割合が決まり、同順位内では均等に分けられます。例えば、配偶者と子どもがいる場合、それぞれ2分の1を相続し、兄弟姉妹がいる場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
相続放棄
相続人は、資産だけでなく債務も引き継ぎますが、資産より債務が多い場合は相続放棄や限定承認を選択できます。相続放棄は家庭裁判所で手続きし、相続開始後3ヵ月以内に行う必要があります。
遺言と遺留分
遺言によって遺産を渡すことを「遺贈」といいます。遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。
遺留分は、法定相続人に保証された最低限の財産取り分で、仮に遺言で全財産を第三者へ譲渡することが指定されていたとしても、法定相続人は受遺者に対して侵害額を請求することができます。この侵害額の請求期限は、相続人が侵害を知った日から1年、または相続開始から10年以内です。
遺留分は配偶者、子、直系尊属に認められ、その割合は法定相続分の半分、または三分の一です。きょうだいには遺留分の権利はありません。
遺産分割
相続が発生すると、最初は被相続人の財産が相続人全体の共有となり、この財産を個々に分配するプロセスを遺産分割と言います。遺産の分割方法には、遺言による指定分割、相続人全員の合意に基づく協議分割、そして裁判所による審判分割があります。
指定分割は、遺言で指示された財産の分割方法です。協議分割では、全相続人の合意が必要で、この合意には法定相続分を必ずしも遵守する必要はありません。合意に至らない場合、家庭裁判所が分割方法を決定します。
遺産分割の手法には現物分割、換価分割、代償分割の三種類があります。現物分割は、相続財産をその物理的な形で相続人に配分する方法です。たとえば、一部の相続人が不動産を、他の人が現金を受け取る場合がこれにあたります。換価分割では、財産を売却して得られた金額を分配します。代償分割は、一人の相続人が大部分の財産を受け取り、その代わりに他の相続人に対して金銭を支払う方法です。