(画像はイメージです/PIXTA)

2025年1月から3月まで放送された大人気のテレビドラマ『プライベートバンカー』。このドラマでは、金融や相続に関する専門用語が多く登場しますが、視聴者の「難しくてわからない」という声も聞こえます。そこで今回は、ドラマの第1話に登場する専門用語を、FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏がわかりやすく解説します。

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資産家一族の“金”にまつわる問題に切り込むドラマ

2025年1月から3月に放映されたドラマ『プライベートバンカー』。資産家一族のお金にまつわる問題に痛快に切り込んだ作品となっており、話題になりました。

 

一方で、専門的な話に踏み込んだ要素も多々ありました。そこで本稿ではドラマの中から、視聴者がつまずきそうなポイントに絞り、下記のトピックについて解説していきます。

 

●愛人の娘も遺産を相続できるのか?

●遺言がカギ…作成するうえでの注意点

●「親族間」での未上場企業株式の取引…贈与税が課されることも

●株主代表訴訟とは?

愛人の娘も遺産を相続できるのか?

ドラマでは、飯田久美子さんが宇佐美健会長の愛人の子どもであることが判明しました。この場合に愛人の子どもも相続できるのかという疑問が生じます。

 

相続の基本ルールとして、法定相続人になるには、法律上の子どもである必要があります。愛人の子どもであっても、認知されていれば法定相続人となり、相続する権利を持ちます。一方、認知されていない場合は、戸籍上子どもとは認められず、相続権はありません。つまり、久美子さんが会長に認知されていた場合、相続する権利があるということです。

 

また、相続の際には遺言書の有無が重要なポイントになります。たとえば、遺言書に「すべての財産を実子に相続させる」と記載されていれば、愛人の子どもである久美子さんが遺産を受け取ることは難しくなります。

 

さらに、相続税の影響も無視できません。相続税の基礎控除額や税率は法律で定められており、資産額が一定を超えると高額な税金が発生する可能性があります。そのため、生前に相続税対策を講じておくことが望ましいです。

「遺言がカギ」…作成するうえでの注意点

ドラマ内では「医師から認知症の診断を受けているかどうかが重要」という話も出ていました。

 

たしかに遺言を残すことは、遺産分割をめぐるトラブルを避けるうえで非常に重要です。しかし、遺言を有効にするためには、遺言能力が必要となります。認知症が進行している場合、遺言能力がないと判断される可能性があり、遺言が無効になることがあります。そのため、認知症の診断があるかどうかが、遺言の有効性に大きく関わるのです。

 

また、遺言書の種類にも注意が必要です。自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、それぞれの法的要件を満たしている必要があります。特に公正証書遺言は公証人が関与するため、遺言の信頼性が高まり、後々のトラブルを防ぐことができます。

 

さらに、遺留分(相続人に保障される最低限の取り分)にも注意が必要です。たとえば、遺言書で特定の相続人に財産を集中させた場合でも、遺留分の規定の考慮が十分でないと、他の法定相続人が遺留分を請求できる可能性があります。

「親族間」での未上場企業株式の取引…贈与税が課されることも

ドラマのなかで、「未上場企業の株式には値段がついておらず、協議によって決まる」という話が出ていました。

 

未上場企業の株式には市場価格がないため、売り手と買い手の交渉によって価格が決まります。ただし、親族間の取引では税法上の評価額(相続税評価額)を下回ると、贈与税が課される可能性があるため注意が必要です。

 

その他、株式の譲渡における注意点

さらに、株式の評価方法には、純資産価額方式、類似業種比準方式、収益還元方式などがあり、適用される方式によって評価額が大きく変わることがあります。特に中小企業の株式は市場流動性が低いため、適正な価格算定が重要となります。

 

株式の譲渡には事業承継の視点も重要です。特に創業者が引退する際には、後継者へのスムーズな株式移転が求められます。これにはM&A(企業の合併・買収)や種類株式の活用といった手法が有効です。

株主代表訴訟とは?

久美子さんが「株主代表訴訟も辞さない」といっていました。

 

株主代表訴訟とは、会社の取締役などが会社に損害を与えた場合、株主が会社を代表して責任を追及できる制度です。通常は会社が取締役の責任を問うべきですが、取締役間の馴れ合いなどで追及がなされない場合に、株主が会社の利益を守る手段として設けられています。

 

この訴訟を起こすには、原則として6ヵ月以上株式を保有している必要があります(非公開会社ではこの要件なし)。また、不正な目的による訴訟は認められません。まず株主は会社に対して提訴請求を行い、会社が60日以内に対応しなかった場合に、株主自身が提訴できる仕組みとなっています。

 

株主代表訴訟は企業のガバナンス向上にも寄与します。たとえば、内部不正の発覚や経営者の責任追及を通じて、企業の透明性を高める効果が期待できます。そのため、最近ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点から、株主代表訴訟を積極的に活用する動きも見られます。

 

ドラマでは、相続、未上場株式の評価、株主権利、税金といった金融・法務に関する重要なテーマが扱われていました。専門用語が多く登場しましたが、理解しておくとドラマの内容がより深く楽しめるはずです。また、これらの知識は実生活においても役立つ場面が多いため、今後の資産管理や経営判断の際に活用できるかもしれません。

 

 

岸田 康雄

公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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★ドラマ「プライベートバンカー」に出てくる用語についてはこちらをチェック!

「プライベートバンカー」第1話に学ぶ!株主の権利や未上場株式の相続を徹底解説

 

★受験すべきプライベートバンカー資格試験についてはこちらをチェック!

プライベートバンカー(プライベートバンカー)資格試験とは何か?

 

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