希望就職先の業種
一方、新卒者が希望する就職先の業種についてはどうであろうか。2024年は2023年と同様に人材需要の高いIT分野が最も多く(26.4%)、次いで政府・非営利組織(9.4%)となっている。製造業分野(自動車・生産・加工・製造)も上昇しており、8.2%となっている。特に自動車産業については、政府が2025年をめどに産業の高度化を目指しており、新エネルギー車*2の普及に力を入れている点なども奏功していると考えられる。
その一方で、昨今の不動産不況、教育分野の規制強化から、不動産・建築(4.8%)、教育・工芸技術(4.4%)は昨年に続いて更に低い状況となった。2022年時点と比較するとその下げ幅は大きい点からも、当初は新卒者の就職先として希望が高く、雇用の受け皿となっていた点がうかがえる。
昨年、政府は就職難を見越して、若年層向けに雇用支援策を打ち出している。教育部は新卒者の起業の促進、中小企業による採用強化、軍隊への入隊促進、大学側の責任の強化など26項目について指針を示した*3。多くは12月末までと期限付きのものであったが、就職が決まっていない新卒者との雇用契約締結への補助金支給、インターンシップ補助金など具体的な対策が示されていた。
一方、本年はそのような具体策はあまり見えてこない。教育部などは国有企業の採用枠拡大など、人力資源社会保障部(労働や社会保障を管轄)は新卒者向けに貧困地区などにおける医療・インフラ建設・農業技術の推進業務の人員を募集4しているが、就職難の改善に大きなインパクトがあるとは言えない状況だ。
その一方で、オンライン経済の急速な進展で働き方が多様化しており、必要であればアプリ登録をし、フードデリバリーなどすぐ働くことができる状況にもある。政府はこういった非正規の働き方を失業の受け皿として奨励はしているが、新卒者がかかえる雇用のミスマッチなど課題の多くは先送りされたままだ。この点からも、今後は新卒者に対する一時しのぎ的な策ではなく、職業訓練や教育訓練など求職者支援制度に相当するような制度の構築や、新卒者と企業側のマッチングをサポートするキャリアコンサルなどの強化が必要となろう。つまり、従来の社会保険と、最後のセーフティネットである生活保護との間を補完する仕組みである「第2のセーフティネット」の構築、またその強化である。
*1:2024年1月に16-24歳の失業率の発表を再開。新たに発表される失業率は仕事を探している学生を除いて算出されることとなった。2024年3月時点では15.3%。
*2:ガソリンや軽油を燃料としてすべて依存する従来型の自動車とは異なる動力源をもつ自動車の総称。中国政府が普及を目指している。中国政府は電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を新エネルギー車(NEV)としている。
*3:教育部「関于做好2024届全国普通高校卒業生就業創業工作的通知」、2023年12月1日
*4:人力資源社会保障部「新華視点|解読2024年高校卒業生“三支一扶”計画、2024年5月14日
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