ただし「日本居住者」の場合、メリットの享受も限定的に
小峰:日本居住者であっても、シンガポールのプライベートバンクに口座を開けば、これらのメリットをフルに享受できるのでしょうか?
井上:海外のプライベートバンクは日本居住者に対して比較的オープンではありますが、やはり限界があります。
小峰:具体的に教えてください。
井上:まず、日本居住者に対しては規制の関係で販売できない商品があることです。2つ目は、銀行内に「ジャパンチーム」がない、あるいは、日本居住者はグループ内の日本法人・支店から販売するため、シンガポールでは対応しないというケースもあります。3つ目は、日本の所得税がかかり、メリットが減殺されてしまうというところです。しかし、日本非居住者の場合は、これらのハードルを越えることが可能です。
プライベートバンク利用の基準、500万米ドルから
小峰:プライベートバンクについて多く聞かれる質問に「最小預け入れ金額」があると思います。率直なお話、いまはいくらぐらいなのでしょうか?
井上:500万米ドル(約8億円)を基準にしているプライベートバンクが多いでしょう。
小峰:そうなのですね! 私が香港に住み始めた2010年は、100万米ドル(当時のレートで約8,500万円)が基準といっていましたから、相当ハードルが上がりましたね…。
井上:はい。2015年前後までは、100万米ドルが基準のプライベートバンクがありましたが、2017年前後には300万米ドル、いまでは500万米ドルと、基準が上がってきました。しかも円安が進行していますから、日本人にとってはハードルが物凄く上がったといえます。
エクスターナル・アセット・マネジャー(EAM)の意義
小峰:ここまでのお話で、プライベートバンクは、金額的なハードルは高い反面、そこを越えさえすれば、手数料が割安で頼りになる存在だとわかってきました。
井上:ただ、プライベートバンクも商売ですから、手数料を稼ぐために顧客に提案せざるを得ないこともあるでしょう。残念ながら、多くの顧客はそれを見抜けません。
小峰:プロとアマの間の情報格差ということでしょうか?
井上:やはり、買い手側が十分な情報と知識を持っていないと、問題点を見抜けないことはあります。ところが、EAMがアドバイザーとしてつけば、プライベートバンクに足元をすくわれる危険を回避できます。これが1つ目のポイントです。
小峰:なるほど。
井上:次に、資産が大きくなってくると、複数のプライベートバンクに資産を分散させるお客様もいらっしゃいますが、複数のプライベートバンクをご自身でコントロールするのは面倒です。取引の指示はもとより、住所変更などの手続をひとつひとつのプライベートバンクに伝える必要がありますし、全体でどのような資産を持っているか、一覧性をもって確認することも難しくなります。
小峰:確かにそうですね。
井上:しかし、EAMを経由して個々のプライベートバンクと繋がっていれば、こうした問題も解決できます。お客様の多くが、財テクよりも本業のお仕事やプライベートのお時間を大切にされたいと思っていらっしゃるのも、EAMを活用する理由のひとつではないでしょうか。
EAMを使っても、決して手数料が割高にならないワケ
小峰:良いことづくめですが、プライベートバンクの手数料に、EAMの手数料が乗ることで、コストが高くなりませんか?
井上:個々の富裕層の方が個別にプライベートバンクとお取引するのとくらべると、EAMは各プライベートバンクで複数のお客様の口座を管理していますから、スケールメリットがあります。全体の取引規模や情報力によって、プライベートバンクに対する価格交渉力がお客様が個別に取引する場合よりも圧倒的に大きいため、EAMを経由することで割安に取引できるのです。
小峰:ホテルに直接連絡するより、予約サイトから予約したほうが安いということと、近い印象ですね。お話をお聞かせいただき、ありがとうございます。

小峰 孝史
小峰 Investments
マネージング・ディレクター・弁護士
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