証券会社の機能を兼ね備える、香港・シンガポールの銀行
日本や米国では、決済機能を営む銀行がリスクの高いビジネスを行わないようにするため、銀行業と証券業を原則として分離する「銀証分離」の政策がとられてきました。
徐々にこの分離は緩和され、いまでは、銀行も金融商品の販売に熱心になってきていますが、銀行と証券は別というのが原則です。
一方のヨーロッパでは、銀行業と証券業は分離されておらず、こうした業態は「ユニバーサルバンク」と呼ばれています。そして、英国の植民地だった香港・シンガポールは、このヨーロッパ流のシステムを受け継ぎ、銀行で多様な金融商品を扱っています。
そのため、銀行に口座を開設するだけで、いろいろな金融商品への投資をできるというのが、第一のメリットだといえます。
香港・シンガポールの銀行は、海外送金が「断然ラク」
富裕層の方は、海外投資をしているケースも多いと思います。
しかし、日本の銀行から海外の銀行口座に送金するのは簡単ではありません。銀行員から「何のための送金ですか?」と聞かれたり、不動産を買うと伝えても「契約書を見せてください」といわれたり…。自分のお金を使うのに、なぜ、ここまで面倒な手続を要求されるのか、と思った方も少なくないでしょう。
一方、香港やシンガポールの銀行から海外送金する場合、そのような立ち入った質問を受けることは滅多にありません。パソコン・携帯電話の操作だけで完了することも多いのです。
マルチカレンシー口座を使って、「ハブ空港」のように使う
香港やシンガポールの銀行では、米ドル・香港ドル・シンガポールドル・日本円・人民元など複数の通貨で入金された場合、その通貨のまま保管できる「マルチカレンシー口座」を普通に作ることができます。
日本でもマルチカレンシー口座を開設できる銀行はありますが、上述したように、海外送金は簡単ではありません。ですから「日本の取引先から100万米ドルの入金があったので、米ドルのまま保管する。2ヵ月後に、そのうち30万米ドルでタイの不動産を購入する」というような使い方をするには便利とはいえません。
一方、香港やシンガポールの銀行の場合、海外送金も簡単ですから、「日本の取引先から100万米ドルの入金があったから、米ドルのまま保管する。2ヵ月後、そのうち30万米ドルでタイの不動産を購入する」といった使い方もしやすいのです。
「ハブ空港」という言葉をご存じでしょうか。たとえば、東京からインドネシアのバリ島に行くとき、まず東京からシンガポールまで飛行機で向かい、シンガポールでバリ島に行く飛行機に乗り換えることがあります。そのような乗り換えに便利な空港を「ハブ空港」といいます。
香港やシンガポールの銀行は、グローバルに資金を使っていく場合、ハブ空港のような使いやすさがあるのです。
途上国・新興国に暮し、香港やシンガポールの銀行で資産管理
最近では、海外に暮し、フリーランスで仕事をする人も増えています。
「金融ハブ」でもある香港・シンガポールへ移住し、現地に会社を作り、現地の銀行に法人口座あるい個人口座を開き、その口座を活用して投資をするのは、とても使い勝手のいい方法です。
では、発展途上国や新興国に移住する場合はどうでしょうか?
たとえば、新興国のタイの首都バンコクは、日本人が5万人以上も暮らし、高級ショッピングモールからドン・キホーテまで立ち並ぶ、日本人が住みやすい都市です。
ところが、海外送金の自由化はまだまだです。送金によってはタイ中央銀行の事前承認が必要で、取引との関連のない海外送金は、年間5万ドル(約750万円)という上限があります※。
※ 参考:JETRO「タイの為替管理制度について」(https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/trade_04.html)
そのため、タイに暮していても、自分の資金の管理をタイ国内で行うのは考えものなのです。むしろ、タイ国内の銀行には家賃など普段の生活に必要なだけ入れ、まとまった資金は香港やシンガポールなどの金融ハブの銀行で管理するほうが便利だといえます。
香港とシンガポール、どちらの利便性が高いのか?
ここまで、香港やシンガポールの銀行のメリットを説明してきましたが、香港とシンガポールを比べた場合、どちらがよいといえるのでしょうか?
筆者自身、香港とシンガポール両方の銀行口座を保有・活用していますが、どちらの口座も同じレベルで、甲乙つけがたい便利さだという印象です。
ただし、口座の開設しやすさはかなり違います。
【個人口座開設の場合】
香港居住者が香港で口座開設する、シンガポール居住者がシンガポールで口座開設することは、もちろん可能です。非居住者の場合、香港非居住者が香港で口座開設するのは、楽ではありませんが十分可能です。一方、シンガポール非居住者がシンガポールで口座開設するのは、絶対に無理ではないものの、非常に厳しいというのが現状です。
【法人口座開設の場合】
香港法人が香港で口座開設するのは、香港在住の取締役がいれば十分可能です。一方、シンガポール法人がシンガポールで口座開設するのは、これまで取り扱ってきた複数ケースから見て、香港に比べてハードルが高いというのが筆者の印象です。
口座開設にかんしては、トータルで見た場合、香港のほうがシンガポールに比べ、ハードルが低いと感じます。
このような違いはありますが、香港・シンガポールとも、使い勝手のよい金融ハブであることには変わりありません。ぜひ使いこなしていきましょう。
小峰 孝史
小峰 Investments
マネージング・ディレクター・弁護士
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