エクスターナル・アセット・マネジャー(EAM)という仕事
以前より一部の富裕層の間では、海外投資の際にプライベートバンクを活用し、さまざまな手間を軽減・メリットを享受する方法が知られていました。しかし一方で、プライベートバンクを活用したいが、具体的な方法がわからないという方もいます。
じつは、プライベートバンクを使う富裕層のサポート役として「エクスターナル・アセット・マネジャー」(EAM)という存在があり、多くの富裕層が彼らと二人三脚で海外投資を行っています。
ここでは、長年にわたりシンガポールのプライベートバンカーとして実績を積んだあと、EMSとして活躍する井上さん(仮名)に、日本の金融機関と比べた海外プライベートバンクのメリット、さらに、エクスターナル・アセット・マネジャー(EAM)を通じて投資するメリットについて、くわしく聞きました。
日本の金融機関と比較した、海外プライベートバンクの「強み」
小峰:日本の金融機関と比較した場合の、シンガポールのプライベートバンクの強みとはなんでしょうか?
井上:3つの強みがあると思います。ひとつは、投資の選択肢が多いことです。シンガポールのプライベートバンクは、株・債券などを幅広く取り扱っているのはもちろん、オルタナティブ投資・デリバティブなどのさまざまな金融商品、保険、昨今では暗号通貨取引等へのアクセスもあります。
小峰:プライベートバンクといえば、顧客ごとに担当者がついて丁寧なサービスを提供してもらえる一方、高額な手数料を取られるのでは…と不安に思う方もいるようです。
井上:それは誤解です。2つ目の強みは、手数料の安さです。同じ商品を同じ金額で購入する場合、日本よりも海外のプライベートバンクで購入するほうが、手数料がずっと安いことが多いのです。ざっと、5分の1から10分の1のイメージです。
小峰:それは意外です。なぜ手数料が安いのでしょう?
井上:日本の銀行・証券は、海外のプライベートバンクと比べ、かかっているコストが桁違いです。日本の金融機関の場合、日本各地に支店を置いてATMを設置しています。わずか5万円、10万円を預ける預金者のために多額のコストを費やしているのです。
小峰:なるほど。
井上:一方、プライベートバンクは、シンガポールに1店舗、香港に1店舗…といった程度の、極めて少数の店舗しかありません。スタッフも、日本の銀行に比べれば極めて少人数です。しかし、お客様1人当たりの平均的な預かり残高がはるかに大きいため、ロットサイズで収益を稼ぐことができます。この収益構造の違いが、海外のプライベートバンクの手数料が安い理由です。
小峰:そうなのですね。
井上:そして、3つ目の強みとしては「効率的な運用」があげられます。日本では、原則として銀行と証券会社が分離されていますが、シンガポールでは峻別されません。そのため、資金を借りて、株・債券・保険といった金融商品を買うことができます。つまり、レバレッジをかけられるわけで、効率的な運用が可能です。
小峰:それは利便性が高いですね。
井上:とくに日本のオーナー会社では、会社には資金が溜まっているけれども、オーナー個人には資金があまりないというケースがあります。しかしシンガポールでは、事業会社の余剰資金を担保として預け、オーナー個人が投資資金を借りることもできます。この資金で、オーナー個人が金融商品を買い、運用していくことができます。