日本居住だと所得税が納税できない、まさかの事態に…フリーランスのブロックチェーンエンジニアが「バンコク移住」を選択した必然的理由【弁護士が解説】

日本居住だと所得税が納税できない、まさかの事態に…フリーランスのブロックチェーンエンジニアが「バンコク移住」を選択した必然的理由【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年では、海外移住を選択するフリーランスの方が増えています。自由を謳歌するためと思われがちですが、法律が障壁となる切実な事情によるケースがあることは、あまり知られていません。今回は、やむにやまれぬ理由でタイへ移住したエンジニアの方に話をうかがいました。※本記事は、OWL Investmentsのマネージング・ディレクターの小峰孝史弁護士が監修、OWL Investmentsが執筆・編集したものです。

日本企業から米国系IT企業へ、その後は海外のクリプト企業へ

小峰:ご経歴を教えていただけますか?

 

佐藤:私は大学を卒業後、日本企業でエンジニアとして働いていました。日本生まれ日本育ちなのですが、外国で仕事をしたいという憧れがあり、20代の終わりごろ、米国カリフォルニア州のベイエリアへ仕事を探しにいきました。

 

小峰:いかがでしたか?

 

佐藤:残念ながら、なかなか仕事を見つけることができず、日本で米国系IT企業に転職しました。しかしその後、海外のクリプト企業で開発チームの統括をやるようになったことが転機になりました。この企業では、完全フルリモートで仕事をしていたのです。

 

小峰:完全フルリモートの会社員というのも可能なのですね。

 

佐藤:ITエンジニアだから可能だったのだろうと思います。ITエンジニアの場合、対面でのコミュニケーションがほぼ不要ですから。とはいえ、相当実力がないとできませんし、リスキーです。

フリーランスとして、海外のクリプト企業向けの仕事を担当

小峰:それだけ、実力があったということですね。

 

佐藤:会社の開発チームの統括という立場上、組織をまとめる必要があったのですが、その組織をまとめる仕事自体に疲れてしまいました。

 

小峰:ストレスも大きかったと…。

 

佐藤:はい。そこで、そのクリプト企業の開発チームの統括を降り、別の企業でフリーランスとして働くようになりました。ここも、やはり海外のクリプト企業です。

 

小峰:その会社では、どういう立ち位置で仕事をしているのでしょうか?

 

佐藤:フリーランスでありながら、チームを束ねる立場です。チームメンバーも皆フリーランスです。

 

小峰:フリーランス軍団の長という地位なのですね。

 

佐藤:会社には正社員がほとんどおらず、同様のフリーランスのチームがいくつもあり、そのようなフリーランスのチームを束ねる形で会社が成り立っています。

自社発行トークンでの報酬、日本在住では納税もままならず…

小峰:どういった経緯で海外移住したのですか?

 

佐藤:私がもともと海外に興味があったというのも理由のひとつですが、それ以上に切実な理由もあります。私が受け取っている報酬は、現金のケースもありますが、業務委託先の会社自身が発行しているトークンで受け取っている分が多いのです。

 

小峰:なるほど。

 

佐藤:自社発行トークンで受け取っているとはいえ、報酬として金銭的価値のあるものを受け取っているわけですから、所得税の納税をしなくてはなりません。しかし、その自社発行トークンを日本国内の暗号資産取引所では現金に換金することができません。したがって、納税するための原資を作ることもできないのです。

 

小峰:それは大変ですね!

 

佐藤:日本に住みつつ日本で納税することができないので、海外移住せざるを得ませんでした。

 

小峰:日本の暗号資産取引所で取り扱う暗号資産は、いわゆる「ホワイトリスト」のトークンに限定されていますから、新規に発行されたトークンを日本国内で換金できるのを待つのは、たしかに現実的ではないですね。

 

佐藤:はい。止むに止まれぬ事情です。

 

小峰:日本がブロックチェーン立国を目指すのであれば、政治家に真っ先に動いてほしいポイントのひとつですね。

バンコクは日本人にとって住みやすいエリア

小峰:海外移住が必須だったということですが、なぜバンコクを選んだのでしょうか?

 

佐藤:バンコク以外に、シンガポール、マレーシアの首都クアラルンプール、フィリピンの首都マニラも考えました。しかし、シンガポールは、物価が高すぎますよね。コンドミニアムの家賃など、東京の3倍くらいします。それに、国が狭くて楽しみが乏しいように思いました。

 

小峰:ほかのエリアはどうでしたか?

 

佐藤:マレーシアの首都クアラルンプールは、物価は手頃でしたが、飲みに行く場所も少ないですし、マニラは、子連れで行くには治安がイマイチですね。

 

小峰:バンコクでは、どのエリアにお住まいでしょうか?

 

佐藤:スクンビット通り界隈に住んでいます。バンコク在住日本人の大多数が住んでいるだけあって、何から何まで揃っていて、便利です。私の場合、妻と子ども1人の3人家族で、犬も一緒です。しかも、1部屋は仕事用に使いたいという希望もありました。

 

小峰:わんちゃんも一緒ですか。

 

佐藤:はい。そのため、ペット可で、ベッドルームが3つあるコンドミニアムを希望していました。ほかにも、バスタブがある、幼稚園が近いなど、かなり希望が多めでした。それでも、これらの条件をすべて満たしたコンドミニアムが見つかりました。

 

スクンビット通りにあるプロンポン駅直結のショッピングモール内にある紀伊国屋書店には、日本語書籍も揃う(筆者撮影)
スクンビット通りにあるプロンポン駅直結のショッピングモール内にある紀伊国屋書店には、日本語書籍も揃う(筆者撮影)

自身の資産は「ビットコイン建て」で認識・把握

小峰:今後のプランはいかがでしょうか?

 

佐藤:いつまでバンコクに住むかはわかりません。ただ、先ほど申し上げた、自社発行トークンで受け取る報酬については、日本居住だと納税できないという点が日本の制度上解消されない限り、日本に戻れないですね。

 

小峰:その点さえ解消されれば、日本に戻りますか?

 

佐藤:うーん…。以前、税務調査に入られて、ネチネチと嫌味をいわれて、日本の税金が本当に嫌なんですよね。普通のフリーランス相手に税務調査するヒマがあったら、裏金議員のところに行けばいいのに、と思います。

 

小峰:日本にいつ戻るか決まっていない佐藤さんの場合、資産はどの通貨建てで貯めているんですか? 米ドル建てでしょうか? それともタイバーツ建てでしょうか?

 

佐藤:香港法人を設立して、仕事は香港法人名義で受けています。たしかに、香港ドルや米ドルで資産を蓄えていますが、私の意識としては、「何ドル持っている」というよりビットコイン建てで「何BTC持っている」という意識ですね。

インタビューを終えて

国境を越えてフリーランスとして就業、日本居住では納税のしようがなく、やむを得ず海外移住、資産はビットコイン建てで把握…というように、佐藤さんは筆者のお客様のなかでも典型的な新世代の海外移住フリーランスの方です。

 

私もインタビューをしながら大変刺激を受け、こうした方々に有意義なスキームを作りたいという、自分自身の新たなモチベーションの高まりを感じました。

 

 

小峰 孝史
OWL Investments
マネージング・ディレクター・弁護士

 

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