毎日が新鮮。もっともっと楽しみたい
村上さんも、オーストラリアにやってきて、やはり大変だと感じるのは、英語だ。
「語学学校も、自分のレベルでは追いつくのが大変です。英語の学校ですが、授業はすべて英語ですから、結局わからないまま、という事態が授業中に頻発していまして。授業が終わったあと、家に帰って調べ直したりして復習しないと理解ができない」
授業中はスマホ禁止なので、翻訳アプリも使えない。わからなかった単語をピックアップしておいて、休み時間に大急ぎで調べたりすることもあるという。
「食らいついています(笑)。でも、クラスメートはそんなことはなくて。ブラジル、コロンビア、ベネズエラなど南米の人が多いですね」
クラスメートとはすぐに仲良くなった。交流はとても楽しい。
「文化がまったく違うのが、お互いに面白くて。昨日もクラスメートのブラジル人男性に、学校が終わったあと、飲みに誘ってもらったんです。彼の友達やその彼女、親戚など、いろんな人がいて、私の彼も一緒に行って」
ネイティブではない人たちがほとんどであれば、英語の会話も問題はなくなった。
「友達と会話したり、パーティに行ったときに会話したりという最低限くらいはできるんですが、やはりネイティブ同士の会話に一緒に入っていると、もう悔しいというか、半泣き状態になっています(笑)」
まだ仕事はしていないが、これから仕事をすることになれば、英語が流暢でなければいけない場面がたくさんあると考えている。だからこそ、英語をさらに磨きたい。
「早く働きたいですね。というのも、物価がとにかく高いので。貯金があっという間に消えていってしまいます。この先の課題は、仕事探しです」
それにしても、ほんの少し前まで、東京で代わり映えしない日々を繰り返していたのだ。それが、わずか半年ほどで一変してしまった。
「毎日が新鮮ですね。シドニーに着いてから、何もかもが新鮮です。スーパーに行って品物を見るだけでも。海外のお菓子とか、売っているものの大きさとか、違いを見るのも楽しい。街のつくりの日本との違いも面白いです」
シドニーに着いたときには、ここはどこの国かわからないほどだと思ったという。
「人種差別があるんじゃないかとか、勝手に想像していたんですが、とんでもない数の人種の人たちがいるので、誰も何も気にしていないですね。みんながマイノリティ、という印象です。これもびっくりでした」
日本人の友達がたくさんできたことも意外だった。同じ思いを持ってやってきた者同士。やはりあっという間に打ち解けるのか。
「SNSで見つけたんですが、先週、日本人のパーティがあったんです。200人くらいは来ていたかな。そこでまた日本人の友達がたくさんできて。その子たちと今週末、うちでホームパーティをするんです」
実は海外は、18歳のときに10日間ほどアメリカに行っただけだったという。大胆な決断だったが、だからこそ今がある。
「語学学校が終わったら、オーストラリアでいろんな都市を巡ってみたいです。違うところに行って、違う景色を見てみたい」
期間は1年と決めている。その後のことは、まったく考えていない。
「英語が習得できても、それが役に立つかどうか、あまり期待もしていません。行き当たりばったりでいいのかな、と。それより、もっともっと毎日を楽しみたい、と思っています」
これでいいじゃないか、と後押ししてくれる空気が、オーストラリアにはあった。
上阪 徹
ブックライター
※本記事は『安いニッポンからワーホリ!最低自給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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