一時「1ドル=153円」に反落も…金利差の縮小に関係なく、投機筋による「円売り」が進むワケ【国際金融アナリストの見解】

5月21日~5月27日の「FX投資戦略」ポイント

一時「1ドル=153円」に反落も…金利差の縮小に関係なく、投機筋による「円売り」が進むワケ【国際金融アナリストの見解】
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週は、一時「1ドル=153円台」に米ドルが反落する場面もあった「米ドル/円」。投機筋の行き過ぎた米ドル買い・円売りへの修正が主因とされているが、「日米金利差の米ドル優位・円劣位が縮小されても、投機筋の円売りには影響しない」と、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は言います。その理由と、今週の相場の展開予測を詳しく見ていきましょう。

投機筋が「米ドル買い・円売り」を継続するワケ

日米金利差は、長期金利、10年債利回り差で見ても3%以上といった具合に、大幅な米ドル優位・円劣位となっています。それはもちろん、「円売り」にとって圧倒的に有利な要因であり、逆に言えば「円買い」には極めて不利な要因です。そのため、多少の金利差の変動であれば、投機筋の米ドル買い・円売りは、影響を受けずに続いていくと考えられます。

 

金利差を日米の政策金利で見ると、足下では5%以上と大幅な米ドル優位・円劣位となっています。同じように、日米政策金利差の米ドル優位・円劣位が5%もの幅に拡大したのは2006~2007年にもありました。このとき、CFTC統計の投機筋の円売り越しは、2007年6月に18万枚という過去最高を記録しました(図表4参照)。

 

出所:
[図表4]CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

この統計の円の売り越しは、普通なら10万枚を超えると「行き過ぎ」が懸念されます。ということは、2007年6月に記録した18万枚は、極端な「行き過ぎ」、すなわち「バブル」の域に達していた、と言えます。

 

CFTC統計の投機筋の円売り越しは、4月末にほぼ18万枚まで拡大しました。日米金利差の米ドル優位・円劣位のなかで、圧倒的に有利な円売りが「バブル化」する―、最近の円売りは、この2007年の状況と、ほぼ同じ構図で展開していると考えられます。そして、そのような投機筋による「円売りバブル」が、金利差の変化以上に、米ドル/円の変動に影響する状況が、最近にかけて続いてきたのではないでしょうか。

 

以上を踏まえると、水曜日にCPI発表を前後して米ドル/円が156円台から一時153円台まで約3円と比較的大きく米ドル安・円高に戻したのは、米金利の低下にともなう日米金利差の米ドル優位・円劣位の縮小の影響以上に、投機円売りが円買いに転じた影響が大きかった可能性が高いです。それはなぜか?

 

上述のように、CPI発表の前日、火曜日の時点で、CFTC統計の投機筋の円売り越しは、12万枚と高水準を維持していました。要するに、米ドル買い・円売りの「行き過ぎ」が懸念される状況だったようです。そういった「行き過ぎ」が、CPIを受けて米金利低下、金利差の米ドル優位・円劣位の縮小となったことをきっかけに修正に向かったことで、米ドル売り・円買いとなり、比較的大きな米ドル/円の下落をもたらしたことが、その理由でしょう。

今週の注目点=米ドル/円は投機「円売りバブル」次第

米ドル/円の行方は、投機の「円売りバブル」次第という構図が、引き続き継続するのであれば、今週の米ドル/円の見通しも、投機の「円売りバブル」の動向が最大の焦点になるでしょう。「円売りバブル」というくらいですから、投機筋の米ドル買い・円売りもかなり「行き過ぎ」懸念が強くなっている可能性がありそうです。その意味では、投機筋のさらなる米ドル買い・円売りが、「米ドル高・円安」をもたらす余地には、おのずと限りがあると考えられます。

 

一方で、先週のCPI発表後のように、投機筋の円売りポジション調整が大きく広がった場合は、「米ドル安・円高」に大きく戻す可能性もあるでしょう。以上を踏まえて、今週の米ドル/円の予想レンジは、153~158円で想定します。

 



吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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