(※写真はイメージです/PIXTA)

現時点では不確定な部分もありますが、厚生労働省は2026年度をめどに「共通算定モジュール(※1)」を本格的に提供開始する予定です。これに伴い、保険医療機関から審査支払機関への診療報酬の請求にかかる間接コストの縮小を目指す動きもあり、レセプト(※2)にかかる一連の実務が大きく変わっていくでしょう。本記事では、2024年度診療報酬改定と医療業界のDXについて、日本レセプト学会理事長であり就実短期大学教授の大友達也氏と、同学会学会長であり東京医療保健大学教授の瀬戸僚馬氏が解説します。※1:診療報酬やその改定に関する作業を大幅に効率化し、医療機関やベンダの負担軽減に向けて、各ベンダが共通のものとして活用できる、診療報酬算定・患者の窓口負担金計算を行うための電子計算プログラムのこと。※2:医療機関が保険者に提出する月ごとの診療報酬明細書のこと。

「レセプトチェック」ツール導入時のポイント

やや専門的な細かい内容となりますが、ここで病院の実務者向けに2点補足したいと思います。

 

将来的なクラウド化も見越した選定を行う

1つ目は「レセプトチェック」を行うための製品を選定する際には、クラウド対応のものをお薦めしたいということです。昨今では「レセプトチェック」も高度化が進み、AIを活用する前提のクラウドサービスも増えています。

 

しかしセキュリティ上の理由等から院内データをクラウドで扱うことが難しい場合も多く、その際にはオンプレミスの環境を構築することになりますが、中長期的な視点に立って将来的なクラウド化も見越した選定をしておくのが無難といえます。

 

医師事務作業補助者による「症状詳記」の代行について

2つ目は2024年の疑義解釈(事務連絡 令和6年3月28日付 厚生労働省保険局医療課発「疑義解釈資料の送付について(その1)」問53)において医師事務作業補助者が「症状詳記」を代行できると明記されたことについてです。

 

[図表] 令和6年3月28日付 厚生労働省保険局医療課発「疑義解釈資料の送付について(その1)」問53

 

「症状詳記」はあまり一般に知られない用語ですが、傷病名や請求項目だけなく、診療行為の背景として症状や治療経過等を詳しく説明したもので、診療報酬の請求に必要な場合があります。「レセプトチェック」でも「症状詳記」の記載の有無や適切さはしばしば精査の対象となる重要項目となります。

 

ポイントになるのは、当該の事務連絡の記載は単なる医師事務作業補助者へのタスクシフトだと捉えるべきではないということです。

 

「症状詳記」の記載を前倒しできることにより、ある1人の患者さんが「症状詳記の記載が必要なほどの重篤な状態」だいうことをすべてのスタッフ間で共有し、今後の方向性も含めて主体的に考えられる可能性を開くものといえるでしょう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
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