よく聞く「183日ルール」の真偽
海外移住にまつわる各種サポートやアドバイスを行っている筆者の元には、それらに関連する多くの質問が寄せられています。なかでもとくに多いものが「日本の〈非居住者〉になるためには、〈183日間〉海外にいれば大丈夫なのでしょうか?」という質問です。
これは、世間でいうところの「183日ルール」なのですが、この「183日ルール」は、そもそも間違いなのです。
国税庁のウェブサイトにも、「滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。」と明記されています。
所得税法における「居住・非居住」の定義とは?
では所得税法上、どういう場合に「日本の非居住者」に該当するのでしょうか?
所得税法において、非居住者は「居住者以外の個人」と定義され、「居住者」とは、日本国内に「住所」があるか、または現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。
「住所」については所得税法に定義されておらず、民法の定めを援用するのですが、住所とは「各人の生活の本拠」をいい、国内に生活の本拠があるかどうかについては、「住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断する」ことになっています。
また「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないものの、その人が現実に居住している場所」とされています。
「住所」については、所得税法基本通達2-1に「人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは、客観的事実によって判定する」とあります。これまで、裁判所の判断は、おおむね、
①住居
②職業
③国内において生計を一にする配偶者その他親族を有するか否か
④資産の所在等
の、4つの要素に基づく総合判定になっています。