(※写真はイメージです/PIXTA)

タワマン需要が伸び続けている。なかでも、特に高い人気を誇るのが東京・湾岸地区の豊洲、勝どきにあるタワマンだろう。物件価格の相場は当然のように1億円を超えている。世間一般で「勝ち組」と称されるような収入の高い世帯でなければ手が届くものではない。しかし、その実態は物件価格に見合ったものではないと否定する人もいるという……。元住民に話を聞いた。

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「湾岸はもう人の住む場所ではない」

「子供が大きくなるにつれ、保育園で仲良くなったママ友がみんな『塾、どこに入れる?』ってソワソワするようになって。私も夫も高校まで公立だったので、中学受験が前提という価値観がどうしても合わなくて」と男性の妻は明かす。

 

高収入のエリートサラリーマンが多く集まる湾岸のタワマンでは、子どもの教育に熱心な家庭が多い。豊洲にはSAPIXや早稲田アカデミー、日能研といった大手の塾が軒を連ね、夕方になると子供たちが吸い込まれていく。

 

「まだ小さいうちから受験のために競わされて、本当にそれって子どものためになるのかなって。でも、そういうことは口に出せない雰囲気でした。今年はあの塾から開成に何人合格したらしいとか、あそこは最近落ち目だとか、そんな話ばかり」とため息を付く。

 

現在、大学受験は総合型選抜と推薦入試が主流になりつつあり、いわゆるペーパーテストの一般入試は今後もどんどん減っていくのは確実だ。しかし、豊洲に住むようなエリートは自分が成功したから子どもに自分のようなルートを歩んでほしいと、小学生のうちから勉強を強いて、テストの点数で競わせるという昭和の価値観を引きずっているという。

 

「小学校も受験最優先という雰囲気で、メンタルを崩す子どももいると聞きました」

 

「教育」の価値観が異なる湾岸と埼玉

一方、川口市に引っ越して驚いたのが、豊洲とは真逆の価値観だという。

 

「中学受験をさせる家庭もいますが、割合としては少数派。埼玉県はもともと公立高校の人気が高いので、わざわざ中学受験させる必要がないという雰囲気です。むしろ放課後は塾よりもスポーツを楽しむなど、湾岸と違って、子どもが子どもらしくいられる場所だと感じます」

 

広々としたグラウンドで伸び伸びと遊ぶ子どもたちを見て、川口に引っ越してきて正解だったと夫婦ともに確信したという。新型コロナ禍を機にリモートワークが導入され、毎日出社する必要がなくなったことも後押ししたという。

 

「部屋の問題もありました。豊洲や勝どきでは1億数千万円出しても70平米の狭い部屋しか買えず、子どもが成長しても個室を与えてあげられません。中学生になっても異性のきょうだいが一緒の部屋に住んでいるケースもあると聞いて、ゾッとしました」

 

ところが川口では8,000万円も出せば、90平米の広々とした部屋が買える。狭い土地にタワマンが林立する湾岸と異なり、高い建物が少ない川口のタワマンは眺望もスッキリしているという。

 

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