今回は、そもそも相続は、民法においてどのように行われるものと規定されているのかを取り上げます。※本連載では、いまや誰にとっても巻き込まれてしまう危険性がある相続トラブルについて、具体的にどのような事態が発生する可能性があるのかを見ていきます。

相続人は相続分に応じて「被相続人の権利・義務」を承継

遺言書がなかった場合、誰がどのように被相続人の財産を受け継ぐのかは、法律の定めたルール、すなわち法定相続の形で決まることになります。

 

そしてこの法定相続のルールが、後ほど触れるように、相続に「悲劇」をもたらす大きな原因の一つとなっていることを心にとどめておく必要があります。

 

そもそも、人の死は予期せず突然にやってきます。民法では、「相続は死亡により、被相続人の住所において開始する」と定めています。相続は人が死亡した瞬間に、その手続きとは関係なく自動的に開始するわけです。たとえ、相続人がその事実を知らなかったとしても、その瞬間から相続人に否応なく全財産が承継されることになります。いわば、相続という誰もが体験するドラマの幕開けです。

 

複数の相続人がいた場合は、いわゆる「法定相続分」の規定により、相続財産はいったん共有に属し、各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する、という民法の理念があります。

 

これが、前述した相続争いが起こる原因でもある「何が何でも平等」意識の根拠となる部分ともいえます。

 

民法の規定によって遺産を受け継ぐ資格のある人のことを法定相続人といい、相続が開始することによって最先順位で相続人となる資格のある人のことを推定相続人といいます。相続分とは、相続人が複数の場合に、それぞれの相続人が持っている遺産に対する権利の割合を指します。被相続人が遺言により相続分を指定した場合は、「指定相続分」といいます。

 

また、遺言による指定がなかった場合は「法定相続分」といい、以下の民法の定める相続分を基準に分割協議します。

 

①先順位者がいない場合は後順位者が相続人となります。

②同順位者が数人いる場合の相続分は均等に分けられます。

③実子と養子の相続分は同じです。

④具体的に相続人となった者の全員を「共同相続人」といいます。

相続人が亡くなっていれば、その子どもが「代襲相続」

さらに、相続に関しては代襲相続にも注意を払っておく必要があります。相続人となるべき人が、相続開始時に死亡その他の理由により相続権を失っているとき、その人の直系卑属(子、孫、曾孫など、自分より下の世代の直系親族)が代わって相続分を相続することを「代襲相続」といいます。代襲相続は相続人の子や孫などの直系卑属、または兄弟姉妹の場合に認められます。

 

ただし、兄弟姉妹が本来の相続人であった場合は、代襲相続が認められるのはその子(被相続人の甥、姪)までで、甥の子あるいは姪の子は代襲相続人になれません。

また、相続放棄をした場合も、代襲相続はできません。

 

【図表 法定相続人と相続順位】

民法では、相続が開始した場合に、法定相続人という誰がどのような順番で相続人になるのかを定めています。このように民法では相続人の範囲である法定相続人の相続順位や相続割合について規定しています。

 

<法定相続人の順位>

① 配偶者に相続順位はなく常に相続人になります。

② 後順位者は先順位者がいない場合に相続人になります。

③ 同順位者が数人ある場合、その相続分は均等されます。

④ 非嫡出子の相続分は嫡出子と同じです。

⑤ 実子と養子の相続分は同じです。

 

<代襲相続について>

相続人である子、または兄弟姉妹が次の事由により相続権を失ったときは、子の場合はその子(孫)、その孫(曾孫)などの直系卑属が、兄弟姉妹の場合はその子(甥、姪)が相続人となり相続します。

① 被相続人の死亡以前に死亡していた。

② 被相続人の欠格事項に該当した。

③ 相続人の廃除をされた。

※ なお、相続開始後に相続人が相続放棄した場合は、代襲相続は生じません。

本連載は、2014年3月22日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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大坪 正典

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