かつては一部の資産家にとっての悩みの種であった「相続」ですが、昨今、社会情勢や家族形態の変化などもあって、一般的な家庭においても、相続をきっかけとした家族の争いが起こりやすくなっているといいます。本連載では、いまや誰にとっても巻き込まれてしまう危険性がある相続トラブルについて、具体的にどのような事態が発生する可能性があるのかを見ていきます。

あらゆる家族にふりかかる恐れがある相続のトラブル

相続がきっかけで思わぬトラブルに巻き込まれた――そんな話を、身の回りで、あるいはテレビやラジオの相談番組などを通じて、最近では誰もが日常的に耳にされていることではないでしょうか。確かに少し前までは相続トラブルとは、主として「お金がたくさんある資産持ちの家」に起こることであり、「財産の有無」だけを判断基準にして無関係と思った方が多かったように感じます。

 

しかし、相続がきっかけとなって引き起こされるトラブルは、財産だけの問題にとどまらず、あらゆる家族にふりかかる恐れのある、いわば「普遍的な問題」です。もともと日本では、親が子を育て、成長した子が老後の親の面倒を見て、その財産を引き継ぐというのが一般的な家族のあり方で、そのようにして家が代々受け継がれていくのが一つの自然な流れとなっていました。また、このような形で行われてきた日本の相続には、故人に対する感謝と畏敬の念を示し、相続人としての礼儀を尽くす「儀式」としての意味合いもありました。

 

ところが、時代の変化に伴って個人が一方的に権利主張する傾向が強くなり、相続人の意識も大きく変わりました。とりわけ昨今は、いびつとも思える平等主義の風潮の中で、被相続人に対して感謝の気持ちがないまま機械的に遺産の分割協議が行われるだけになりつつあり、かつて相続が持っていた上記のような重みある儀式的な意味合いは失われています。

 

その必然的な結果というべきでしょうか、頼るべき存在であったはずの家族自体がいわば「発火点」となり、相続を受ける相続人世代の経済的不安定感や相続人間の平等意識に離婚、再婚の増加といった種々の社会的要因が複雑に絡み合い、相続争いにつながるケースが増えているのです。

どのようなトラブルが起こり得るのかを把握しておく

「争続」以外にも、相続をきっかけとして様々な問題が噴出します。後ほど詳しく見ていきますが、事実婚状態にあった内縁の妻に対して財産をどのように残したらよいのか、放蕩息子にお金を渡したくないがそのためにはどうすればよいのかなど、相続に関わる「悲劇」は、内容もそれが起こる理由も実に様々です。

 

財産の多寡にかかわらず、等しく直面するのが相続トラブルの最大の特徴であることをしっかりと意識しておくべきなのです。そして、相続トラブルをどのように予防すればよいのか、また、その予防策を行うためにはどのようなポイントを押さえるべきなのか、そもそも、どのようなトラブルが起きる可能性があるのかをしっかりと認識しておく必要があります。

 

そこで本連載では、相続の際に亡くなった人、すなわち被相続人の関係者が直面する恐れのある問題について具体的に確認していきます。

本連載は、2016年8月29日刊行の書籍『相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版

相続争いは遺言書で防ぎなさい 改訂版

大坪 正典

幻冬舎メディアコンサルティング

最新事例を追加収録! 「長男だからって、あんなに財産を持っていく権利はないはずだ」 「私が親の面倒を見ていたのだから、これだけもらうのは当然よ」……。 相続をきっかけに家族同士が憎しみ合うようになるのを防ぐ…

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