(※画像はイメージです/PIXTA)

代々の不動産を守り継ぐ地主の相続。それは、当然ながら資産額が大きければ大きいほど、立ちはだかる壁も高く……。入念な準備を施さなければ、納税資金確保のために代々承継している大切な不動産を、自身の子の代で売却せざるを得ない状況に陥るケースもあり得ります。本記事では、藤村家(仮名)の事例とともに、地主の相続における節税対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

都心不動産へのシフト…「ゼ、ゼロが2桁くらい違う」

金融機関や専門家とも打合せを行って導いた結論としては、不動産価格の単価が高い都心部で不動産を購入することであった。

 

相続税路線価や固定資産税評価額に基づき算出する相続税制度から考えると、対策にあたっては時価と相続税評価額が最も大きい場所を狙うべきである。地元とは異なり土地勘がなく不安ではあるが、対策の最大の目的である「相続税をゼロとする」ことを貫き都心部で不動産を探すことにした。

 

また、小規模宅地等の特例の適用や賃貸不動産による評価引き下げの効果を勘案しても地元よりも大きく効果がでることがわかった。

 

早速、信頼のおける専門家へ依頼し都心部に存する販売中の不動産の物件概要書を集めた。FAXで送信されてきた物件資料を見ると地元の不動産と比べると、ものによってはゼロが2つくらい異なり、この大きさでこの金額かと大変驚いた。気になる物件をいくつかピックアップしたうえで、まとめて物件を確認するために内覧の調整を依頼した。

【相続対策】小規模宅地等の特例(土地について)

特定居住用宅地等(自宅/限度330m2)と貸付事業用宅地等(賃貸/限度200m2)については、限度まで目一杯利用するといずれかのみしか適用できない。また、特定居住用宅地等の場合80%減額され、貸付事業用宅地等の場合50%減額される。

 

一見すると、自宅のほうに小規模宅地等の特例を利用したほうがいいと思われるが、そのとおりであろうか。図表1では単価毎に減額される金額を示した。

 

※出所:筆者作成 (借地割合70%、賃貸割合100%)
[図表1]土地――単価毎に減額される金額 ※出所:筆者作成
(借地権割合70%、賃貸割合100%)

 

藤村家の場合は〇〇県に不動産を多く所有しており、たとえば自宅前の相続税路線価が5万円/m2であったとする。自宅の規模はかなり大きいであろうから、限度額の330m2まで適用した場合に減額される金額は1,320万円である。

 

一方、都市部で購入を検討している物件が土地面積200m2であり相続税路線価が100万円であった場合、貸家建付地も考慮して減額される金額は1億2,100万円である。路線価に付与されている借地権割合により異なるが、仮に借地権割合を70%とした場合、「79百万円÷200百万円=39.5%」すなわち6割程度減額されていることになる。

 

①「利用上限330m2かつ減額80%」、②「利用上限200m2かつ減額50%」と文字だけで比較すると、一見①のほうがよさそうに見えるが、効果で検討すると②のほうが大きくなることもあり得る。

 

 

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