(※画像はイメージです/PIXTA)

代々の不動産を守り継ぐ地主の相続。それは、当然ながら資産額が大きければ大きいほど、立ちはだかる壁も高く……。入念な準備を施さなければ、納税資金確保のために代々承継している大切な不動産を、自身の子の代で売却せざるを得ない状況に陥るケースもあり得ります。本記事では、藤村家(仮名)の事例とともに、地主の相続における節税対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

都心不動産を購入することに

観光もかねて後継者の息子家族らと一緒に1週間程度滞在し、都心部の物件を10ほど内覧した。正直、すべて高いなと思ったが、そのうちの3物件について買付証明書を差し入れることにした。

 

地元に戻ってきてからは、取引金融機関の支店長および担当者と面談し、融資の打診を行った。稟議から承認まで1ヵ月程度かかるとのことであり、急ぎ審査を進めてもらうよう要請した。

 

そのあいだに、売主からの売渡承諾書が届き、売買契約書を締結することにした。購入を予定している物件の平均価格は1物件約5億円であり総額15億円であるが、相続税評価額は4億円ほどの計算であり約11億円のマイナスが作れそうである。当該購入後の状況を前提とした相続税試算を行ったところ、相続税はゼロとなるとのことであり安堵した。

【相続対策】貸家(賃貸)による減価(建物について)

貸家にかかる相続税評価額については以下の式で表される。

 

式:貸家の価額=自用の家屋の価額*-自用の家屋の価額×借家権割合×賃貸割合
*固定資産税評価額

 

※
[図表2]建物――単価毎に減額される金額 ※出所:筆者作成
(借家権割合30%、賃貸割合100%)

 

借家権割合は「30%」であることから、すべての部屋を賃貸していれば30%減額される。また、構造や築年数によっても固定資産税評価額の単価は異なることから、たとえば、藤村家が購入する物件が築浅のRCなどであれば、「15万円/m2(仮)×300m2×(1-30%)=3,150万円」となり、建物についても固定資産税評価額から1,350万円ほど減額がなされている。

無事不動産は購入できたが…

審査申し込みから1ヵ月程度経過したとある日。支店長が担当者とともに訪れてきた。

 

結果としては、すべて融資承認になったとのことであるが、当該金融機関のテリトリー外の物件であり審査部への説明および説得に時間を要したこと、融資金額が高額であることから役員の決裁を仰ぐ必要があり事前の説明や資料作成などに時間がかかったとのことであった。また、共同担保として地元の不動産をいくつか入れて欲しいとの要望があったが、相続税の効果を考えれば些細なことだと思い、応じることとした。

 

その後、地元金融機関の都心の支店にて3物件の決済について、日をずらしながら行った。今回は不動産の引継ぎなどもあったことから、後継者である息子(藤村武史)のみ同席してもらい2週間ほど滞在して帰路についた。慣れない場所に長期間滞在していたことからか、年齢的な問題なのか自宅に戻ったときには大きな疲れが溜まっていた。

 

 

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