本調査のポイント
収益性やコーポレートガバナンスなど、企業に対する個人株主の満足度調査を初めて実施
日本の株式持ち合い比率が過去最低水準に低下する中、非課税期間が無期限化された新NISA(少額投資非課税制度)が本年1月よりスタートし、長期安定株主の一翼を担う個人株主への注目度は金融市場において、ますます高まっている。
また、世界的なESG(環境・社会・ガバナンス)への問題意識の高まりなどから、企業のコーポレートガバナンス改善に対し、政府や機関投資家から厳しい視線が向けられている。
しかし、不正問題や取引先との不適切な取引がメディアで大きく取り上げられるなど、日本企業の課題は山積している。
J.D. パワーでは、企業に対する総合的な評価がランキング形式で示されていないことが、こうした情報の非対称性を引き起こす要因だと考えている。
これらの背景から、企業が自社の立ち位置や強み・弱みを把握し改善活動に活用するとともに、個人投資家が中長期的な投資対象を判断する上での指標となるよう、J.D. パワーとして初めて個人株主満足度調査を実施した。
本調査は、自動車、銀行、証券、保険の4業種について、収益性やコーポレートガバナンスに対する取り組みなど、企業に対する個人株主の総合的な満足度を聴取するものである。
個人株主満足度に対するコーポレートガバナンス関連の影響度は4割
個人株主の企業に対する総合的な満足度の測定にあたって、「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の7つのファクターを設定した。
このうち、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の4ファクターは、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードに即している。
総合満足度に対する各ファクターの影響度を統計解析した結果、「収益性/株主還元」と「事業内容と商品・サービス」がそれぞれ21%と総合満足度に与える影響が最も大きいものの、コーポレートガバナンス・コード関連の4ファクターの合計で、総合満足度に対する影響度は4割を占めることが分かった。
金融市場では一般的に、個人株主の関心は配当や優待などに偏り、コーポレートガバナンスなど難易度の高い項目にはあまり目が向けられないとの見方もある。
しかし、企業の不正問題や取引先との不適切な取引などを背景に「取締役会における多様性と適正規模の両立」や「独立社外取締役の機能」などに対しては相対的に厳しい目が向けられており、個人株主のコーポレートガバナンスへの関心は低くないことが確認できた。
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