世界の金融政策のトレンドは、すでに「利下げ」
【質問①の利下げの有無】について加えていえば、すでに世界の金融政策のトレンドは「利下げ方向」です。
新興国を含む中央銀行の政策変更に関するデータをみますと、世界の中央銀行は2024年に入って「都合13回の利上げ、39回の利下げを実施」しています。ちなみに同じデータに従うと、2023年は「都合160回の利上げ、84回の利下げ」、2022年は「都合367回の利上げ、17回の利下げ」でした。
世界のトレンドはもはや「利下げ」であることは明らかです。まさに日銀が利上げを決定した同じ週に、スイス中銀が先進国で初めて利下げに転じています。
また、スウェーデン中銀も、3月会合の声明で、インフレ率が見通しどおり鈍化すれば、5~6月に利下げするとしています。
あくまでパターンではありますが、過去をみると、①スイス中銀の利下げはECBの利下げに先行しますし、②日銀が利上げを始めるとまもなく米国は利下げに転じています。
他国の利下げは、(追い込まれた)米国に利下げの余地を与える
米国にとっての目下の問題は、「ドルや米国債への信用を保つために高金利を維持すると、4つの債務に関する問題が深刻化してしまう。他方で、4つの債務の問題を和らげるために低金利にすると、インフレ懸念からドルや米国債に対する信用が失われる恐れがある」というものです。まさに抜き差しならない状況です。
ところが、他国が利下げを始めれば、現下のようにそれはドル高圧力として表面化しますし、それは米国にとってみると、ドルの価値を維持しつつ、利下げの余地が生じることを意味します。
まさに、願ったりかなったりの状況です(→他方で、ゴールドやビットコイン、株式などが買われていることも大事な点です。インフレも起きています。すなわち、ドルが強いのは、他の不換紙幣に対してだけです)。
ちょうど1980年代の後半に、米国がドルの下落に拍車がかかるのを防ぎつつ、金融緩和を実行するために日本やドイツに圧力をかけて利下げを実行させたことを思い出しました(→そして、この協調が崩れ、日本やドイツが引き締めに転じようとしたことが『ブラック・マンデー』というトリプル安のきっかけとされています)。
うまくすれば「当時といまが似ている」という論を展開できそうですが、いずれにせよ、ドル高と低金利の2つこそ(プラス、原油のドル建て決済の3つこそ)が米国にとっては必要です。