(※写真はイメージです/PIXTA)

足元、米国株の主要3指数(S&P500、NYダウ、NASDAQ)はいずれも史上最高値水準で推移しており、雇用の増加も続くなど、米国経済はまだまだ好調のようにみえます。しかし、フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏は、米国について「来年あたりの景気後退入りを考慮する必要がある」といいます。いったいなぜか、その根拠を詳しくみていきましょう。

米国の「雇用」の実態

4月分の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月から17万5,000人の増加となりました。

 

「(24万人程度の)市場予想を下回った」との報道がありますが、そもそも米国の労働市場(労働力人口;労働供給)は、学校卒業や移民などで毎月17万人~18万人程度拡大しており、17万5,000人の雇用増加(労働需要)は、労働の新規供給をちょうど吸収する追加需要の大きさと考えられます。

 

[図表1]米国の非農業部門雇用者数(前月からの増減)と米国の平均時給の伸び率(3ヵ月移動平均値、3ヵ月前比、年率)
[図表1]米国の非農業部門雇用者数(前月からの増減)と米国の平均時給の伸び率(3ヵ月移動平均値、3ヵ月前比、年率)

 

雇用統計は、他の経済指標以上にブレが大きい統計とされ、単月の動きをもって先行きを論じることは必ずしも適切ではありません。

 

他方で、以下にみるように、雇用統計の多くの指標は、かなり安定したトレンドをもって動くために、過去数ヵ月のトレンドの方向と過去の長期の変動パターンを取り込むと、先行きの予測精度が高いと考えられます。(たとえば、来年あたりといった)「今後」を予測してみましょう。

米国経済は「来年あたりの景気後退入り」を予想

[図表2]に示すとおり、失業率はここ半年程度、上がったり下がったりを繰り返しながらも、ここにきてようやく「上昇トレンド」が姿を現しつつあります。

 

過去、失業率はったん上がり始めるとそのまま上昇を維持し、景気後退に向かいます。「絶対」ではないものの、来年あたりの景気後退入りを考慮する必要がありそうです。われわれは、十分な分散ポートフォリオを構築する必要があるでしょう。

 

たしかに、今後、米国経済が景気後退入りするとしても、それは「まだ先の話」であり、今後数ヵ月の金融市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部たちを含め、「インフレは鈍化するか、高止まりするか」「利下げはあるのか、あるなら、利下げ開始はいつか」の議論に終始するでしょう。

 

しかし、(筆者を含め)アナリストたちはお茶を濁しているだけですし、FRBは楽観を装っているにすぎません。

 

[図表2]米国の失業率
[図表2]米国の失業率

 

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