地政学的な緊張の高まりに「ASEAN以外」に活路を模索
AMROは、フィリピンは主要な貿易相手国(中国、アメリカ、日本など)の経済減速、金融市場の変動、金融状況の悪化といったリスクにも直面しているとしています。また、長期的な成長については、マルコス政権のBBM(Build Better More)政策によるインフラ開発の進捗ペース、中国・米国間の地政学的な緊張の高まりの影響が大きいとされています。フィリピンはまた、エルニーニョなどの気候変動による社会経済的コストの上昇にも直面しています。
フィリピン、日本、米国、オーストラリアの4ヵ国は、高まる中国の強行な外交姿勢に対処するために、防衛や安全保障はもとより、その他の分野での連携を強化し、より強力な経済的な関係を構築する動きをとっています。この「クアッド(4ヵ国)」は、世界的な潮流である「ミニラテラル(限定的な国にとの関係)」グループへ発展する可能性があり、インド太平洋地域に経済的繁栄をもたらすための貿易やインフラ投資、地域的なサプライチェーンの連携、エネルギー安全保障など範囲を広げていく可能性があります。
ASEANを基盤とするアプローチが、南シナ海を含む地政学的・安全保障上の課題に対処するには不充分であると考えられ、新しいクアッドのようなミニラテラルグループの動きが出てきています。米国、日本、オーストラリア、フィリピンは昨年、中国への対応として、クアッド安全保障対話を開始しました。これらの同盟国は、中国の台湾への攻勢に懸念を示しています。
中国はフィリピンの排他的経済水域での補給任務を水砲で妨害するなど、フィリピンとの緊張関係が高まっている中、フィリピンは、中国の対応が不充分なこともあり、一連の鉄道プロジェクトへの中国からの資金提供をキャンセルしました。なお、中国はフィリピンの輸入の最大の供給国で、米国はフィリピンの最大の輸出先です。
フィリピンの環境天然資源省(DENR)は、深刻な水不足解消に向けて、民間企業による大規模な水の供給と水力発電プロジェクトの提案を受け付けています。大手企業を含む計88件の提案を受け取っており、これには、サンミゲル、マニラ・ウォーター、メトロパシフィックなど大手企業が含まれています。
DENRによると、これらのプロジェクトは水供給量の増加だけでなく、水力発電の活用も含まれています。フィリピンの人口の40%がまだ正式な水道を利用できていない状況で、これを整備するためには、2,500億ペソが必要とされています。これらの取り組みの中には、カビテ大規模水道プロジェクトや国立灌漑局が水供給と発電を行う8つの多目的ダムの建設を含みます。8つの多目的ダムは合計で1日あたり約4億1,600万リットルの能力を持ち、水力発電と太陽光発電の両方を活用するように設計されています。
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