フィリピン「脱・中国」へ…関係悪化で融資交渉中止、次の一手を模索

4月8日週「最新・フィリピン」ニュース

フィリピン「脱・中国」へ…関係悪化で融資交渉中止、次の一手を模索
写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、マルコス政権の脱中国路線の動きと、同政権が目指す信用格付Aへの道のりについてレポートします。

中国との関係悪化で融資交渉中止、続々

フィリピン・マルコス政権は、当初中国からの融資で進める予定だったインフラ整備や開発プロジェクトの頓挫を打開するため、日本に資金援助を求めるべきだとエコノミストたちが指摘しています。

 

日本国際協力機構(JICA)はここ数年、フィリピンにとってトップクラスの開発パートナーであり、融資や援助を通じて様々な重要プロジェクトを支援。フィリピンとJICAは先月、マニラ首都圏地下鉄他のために、2,500億円(930億ペソ)の融資協定に調印しています。

 

マルコス政権は、中国との間の領海問題の悪化を背景に、2,280億ペソ相当の主要な3つの鉄道プロジェクトについて、中国との融資交渉を中止しました。具体的には、ビコール地方のサウス・ロングホール・プロジェクト(1,420億ペソ)、スービック-クラーク間の鉄道プロジェクト(500億ペソ)、ミンダナオ鉄道プロジェクトの第1期(360億ペソ)です。

 

国家経済開発庁(NEDA)は、中国からの融資が実現できなかったサウス・ロングホール・レールプロジェクトについては、アジア開発銀行(ADB)を活用して資金調達を行う考えとしています。中国からの資金援助が予定されているのは、農務省のフィリピン太陽光発電灌漑プロジェクトのみです。またミンダナオ鉄道プロジェクトを官民パートナーシップ(PPP)方式で実施することを検討していると述べています。

 

これまで中国のODA資金で完了したプロジェクトは4件で、カリンガ州のチコ川揚水灌漑プロジェクト(45億ペソ)、メトロマニラのエステレラ・パンタレオン橋(18億ペソ)とビノンド-イントラムロス橋(34億ペソ)、そして南部のマラウィ市への消防車寄付(6,500万ペソ)です。

 

JICAのデータによると、フィリピンは2021年4月から2022年3月までの間に、日本から1,090億ペソのODAを受け取っており、東南アジアの受益国の中で最大でした。フィリピンでは、中国がマニラ首都圏地下鉄のような大規模かつ重要なプロジェクトに資金を提供する可能性は低いと考えられており、中国にしがみついていると機会損失につながるという考え方が浸透しつつあります。また、JICAの融資は中国の融資よりも金利が低く設定されているのも特長です。

 

運輸省のバウティスタ大臣は、頓挫している中国関連インフラプロジェクトの遂行のために、日本、韓国、インドからのODAを求めることを検討しているとしています。日本は今年、フィリピン政府の大型投資プロジェクトへの投資と支援に積極的な姿勢を見せている一方で、フィリピンに対する融資枠には上限が存在し、地下鉄建設費の高騰により上限に達する可能性があります。

 

マルコス大統領は、中国との領土問題の悪化を受け、領土保全と平和に対する「深刻な課題」に対処するため、関係機関間の連携強化を指示。中国は南シナ海の大半を自国の領土と主張しており、年間3兆ドル以上の海上貿易が行われる海域で、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、ブルネイと領有権が重複しています。2016年、国連の仲裁裁判所は、中国の広範な領有権主張を違法と判断しています。

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしています。

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