今回は、「国内」ではなく「海外」投資をお勧めする理由について解説します。※本連載は、国際自由人・藤村正憲氏の著書『国際自由人』(IBCパブリッシング)中から一部を抜粋し、海外投資で成功できるノウハウを分かりやすく具体的に解説します。

高いリターンが期待できる新興諸国の投資案件

今回からは、本題の海外投資に話を進めよう。

 

投資をするにしても、日本の株や投資信託で十分ではないか、と思う人もいるだろう。確かに最初は、国内投資から始めてもよい。でも、私が海外投資を勧めるのには3つの理由がある。

 

●高いリターンが期待できる

経済がシュリンクしつつある日本とは違い、海外には、速いペースで成長している国がまだまだある。特にBRICsと呼ばれる新興諸国は、高いリターンが望める投資案件がたくさんある。例えばブラジルは、銀行に預けるだけで金利が10.5%だ。先進国でも、金利が3〜5%の国もある。

 

日本のゼロ金利と比べたら雲泥の差だ。もし金利が10%だったら、7年後にあなたの資産は倍増するし、5%でも十年預ければ30%増、15年預ければ倍になる計算だ。日本の普通預金に預けていたら、一生かかっても倍増は無理だから、この違いは大きい。

政策金利の高い国の例
(2014 年1 月現在)
政策金利の高い国の例 (2014 年1 月現在)
マレーシア証券取引所
マレーシア証券取引所

 

もちろん、為替リスクは考慮しなければならない。例えば、円安のときに海外投資をはじめて、その後円高になったときに円に戻すと、資産は目減りしてしまう。例えば、1ドル=100円のときに、10万円をドル建ての資産に換えると、1000ドルになる。その後、この資産を円に戻すときに1ドル=70円になっていたら、その1000ドルは7万円になってしまう。これでは、仮に年利20%で運用できたとしても、円建てで考えると損をしてしまう。

 

だから、今後円高になると予想したら円資産の割合を増やし、逆に円安になると予想すれば外貨資産の割合を増やす必要がある。ただ、あなたがもし海外で生活するならば、外貨建て資産を円に戻す必要自体がなくなるから、為替リスクは考えなくてもよいことになる。

 

●リスクを分散できる

「卵を一つのかごに盛るな」という有名なユダヤのことわざがある。資産を分散させることでリスクを減らすことの大切さを説いた言葉だ。国内に資産を置くだけではなく、海外投資と組み合わせることで、リスク分散が可能になる。

 

以前、株をはじめたばかりの友人が、勉強のためにといって、JRと日本航空の株を一株ずつだけ買ったことがある。いわゆるブルーチップ(優良株)で、一株なら投資のうちにも入らないので黙って見ていたが、日本航空の株はその後暴落してしまった。彼はずいぶんぼやいていたが、個別の銘柄に投資すると、どんなによさそうに見えても、暴落する危険があるから注意が必要だ。

 

同じような話だが、利回りがいいからといって、新興諸国の株ばかり買う人もいる。順調に行けばもちろん利回りはいいけれども、新興諸国の株は乱高下しやすい。リーマンショックの時には、平均4分の1近くまで株価が下がってしまった。倒産して株式が紙切れになってしまった会社もあった。これほどのことがなくても、発展途上国の株式は、政治が不安定になると、大きく下げることもある。それでも実体経済は悪くないので、長期的に保有していれば株価はいずれ戻るのだろうが、株価がどんどん下がる中で、平然と長期保有するのは難しいだろう。投資のバランスをとることは、やはり重要だ。

自然災害、原発・・・日本はリスクだらけ!?

●日本のカントリーリスクから逃れられる

投資対象として客観的にみると、日本はリスクが高い。国内だけに資産を置いておくのは、危険な状態に達しているといってよい。これからの時代を生き延びるには、「居住」「仕事」「財産」を切り分けて、それぞれを最適な国に移していく、という戦略も必要になってくるだろう。

 

[自然災害のリスク]

東日本大震災や阪神・淡路大震災、新潟の地震。ここ20年の間に、大きな地震が日本を何度も襲っている。また、東海地震は近い将来必ず起こると言われているが、そうなったら、東京が壊滅する恐れもあるし、津波の被害も甚大なものになるだろう。地震リスクを考えると、国内で不動産投資をするのは危険だと思う。もちろん、そのリスクを織り込んで投資をするのであればかまわないが、個人的には、日本の不動産は買わないようにしている。

 

[信用不安リスク]

日本は債務、つまり借金を抱えすぎている。政府の債務額は、1000兆円を超えている。これはGDPの2倍をはるかに上回る金額で、金融危機におちいったギリシアやイタリアをはるかに上回る。もちろん、借金が多くても、貸す側が日本政府を信頼して貸し続ける限りは問題がない。しかし、今後政府への信頼が揺らぐと、大きなインフレが起こり、日本の通貨の価値が下がってしまう可能性も高い。そのとき、海外に資産を移していれば、損失を出さなくてもすむ。

 

【図表】 政府債務残高(対GDP比)上位5カ国

政府債務残高( 対GDP 比) 上位5か国
国際通貨基金(IMF)「World Economic
Outlook Databases」(2013 年10 月版)
政府債務残高( 対GDP 比) 上位5か国 国際通貨基金(IMF)「World Economic Outlook Databases」(2013 年10 月版)

 

アジア通貨危機以降、お隣の韓国では、ウォンの価値が半分ぐらいに下落してしまった。ウォンで海外の資産を買おうとしても、それまでの半分しか買えなくなってしまったのだ。もっと極端な例を出すと、ジンバブエでは、政府の信用がなくなった結果、10年間で貨幣価値が2000万分の一にまで下がってしまい、百兆ドル札が発行されたぐらいだった。ジンバブエから外国の金がすべて逃げてしまい、国の金庫には2万円しか残っていない、という事態にすらなった。日本がここまでひどいことになることはないと信じたいが、いろいろなリスクが複合して実現したら、と思うと恐ろしい。

 

[原発リスク]

原子力発電のリスクも大きい。福島原発の処理に成功するかどうかもわからないし、今後仮に大地震が起こったら、もはや日本は人の住めない国になってしまうかもしれない。海外から見ていたら、なんで日本は自分で自分の首を絞めるようなことをやっているのだろう、と不思議に思う。火力発電や代替発電を利用すれば十分に電力をまかなえるはずなのに、あれだけの事故を起こしても原子力発電にこだわっている。東日本大震災を機に海外移住を決めた人も多いが、今は海外に行けない人も、少なくとも資産は避難させたほうがいい。

国際自由人

国際自由人

藤村 正憲

IBCパブリッシング

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