部下を励ます必要がなくなるとき
「絶望の谷」に落ちると、自信が失われる。この失われた自信は、そう簡単には取り戻せない。
だから謙虚になってコツコツ鍛錬を積もうと努力するようになる。このフェーズを「啓蒙の坂」と呼ぶ。
私どもコンサルタントは、まさにこの「啓蒙の坂」を一緒に登る役割を担っている。3歩進んで2歩下がる。2歩進んで3歩下がる。このような繰り返しで、なかなか前に進んでいく気がしない。
しかし、それでも努力を繰り返すと、ドンドン視座が上がって、いろいろな世界が見え始めるものだ。
視座が高まり、広い世界が見え始めると、さらに謙虚になっていく。なぜなら、有頂天になっていた過去をたまに思い出して自分を戒めるからだ。
マネジャーはこのように部下と伴走しながら、謙虚な姿勢で「啓蒙の坂」を一緒に登っていこう。
「絶望の谷」に落ちるほどではないが、うまくいかないことも多い。だが、「啓蒙の坂」を登っている最中、部下は「他責」にすることがない。自分の力不足でうまくいかなかったとわかっているからだ。
そういう場合は、スルーすればいい。心で見守るだけでいい。未来の成功のために、自分磨きにつき合ってやる。そうすることで部下の市場価値は上がっていく。
市場価値が高くなれば、同じようなプロフェッショナルと知り合う機会が増え、その成功者たちもまた謙虚な姿勢であるからこそ、感化され、さらに謙虚になっていく。
こうなっていくと、マネジャーが励ますことはほとんどなくなる。うまくいかなくて落ち込んでいる部下を見ても、安心して放っておくことができるはずだ。なぜなら、もうプロフェッショナルに近づいているからだ。
身についた知識が知恵を生み、知性も身についていく。この状態が「継続の台地」である。長い道のりだが、順調なら5~10年ほどでこの域に達する。
マネジャーはそういうつもりで、励ましたり、スルーしたりを繰り返すのである(5~10年とはいえそう長くはない。早ければ20代でプロフェッショナルの域に到達する)。
横山 信弘
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長
経営コンサルタント
※本記事は『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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