前回は、大幅な節税が期待できる広大地の規定について説明しました。今回は、「広大地の適用」を勝ち取るための具体的な方法について見ていきます。

国税庁のむちゃくちゃな主張と、その裏の思惑

広大地について、国税庁は平成21年頃から、一層妙なことを言い出しました。

 

「広大地の規定は図のA地(下図参照)のように戸建分譲地として開発した場合に道路といったつぶれ地が生じるから減額している。しかし、その土地がB地のような路地状開発であれば、その土地にはつぶれ地は生じていない。よって、こうした路地状開発のほうが合理性が高いのであれば、B地は減額する必要がない」

 

これはもうむちゃくちゃな主張です。

 

皆さんは下にあげた図のアミカケ部分のa地とb地の、どちらに高値をつけるでしょうか(ただし、b地のほうが、a地より路地部分の面積が広い)。どう考えても同じようなものでしょう。b地のほうが広いといっても、路地部分は実質的につぶれ地です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いずれにしてもa地とb地には大きな差はありませんから、A地とB地の時価(建売事業者の買値)はほとんど同じ。つまり、一般の土地の単価を100とすれば、どちらもほぼ60です。

 

しかし相続税評価額では、広大地の適用によりA地を60弱と評価する一方、適用のないB地は100の評価です。まったく不合理と言うべきでしょう。

 

とはいえ、お上がそう言う以上はこれにしたがうより他ありません。そこで問題となるのは「どちらの開発方法が合理的か」という実務的判断です。これは現地周辺の開発事例で、どちらが多いかを見るわけですが、開発事例の諸条件(とりわけ土地の奥行き)で有利性がかなり変わります。この判断は容易ではありません。

 

結局、この「有効利用地」や「路地状開発適地」の理屈を持ち出した国税庁の思惑は、次のようなものであると思われます。

 

「広大地の規定では評価を下げすぎてしまった。これでは税収が上がらない。理由を付けてなんとか広大地の適用を制限していこう」

 

この思惑はズバリ当たりました。こんな曖昧なものはおいそれと判断できません。中には稀に非常識なまでに「仕事熱心」な税務署員もいます。常識的には大丈夫と思われる土地であっても、運悪くこのような税務署員に当たろうものなら、何を言われるかわかりません。となると本当に微妙な土地であれば、筆者でさえ考え込んでしまいます。

 

そうであれば、一般的には広大地の適用にまったく問題ないと思われる多くの土地までもが「あきらめ」の対象に入っていきます。まさに後述する「無難な評価」です。

目一杯に広大地の適用を追求する姿勢を持つ

しかし、それではいけません。やれる範囲で目一杯に広大地の適用を追求する必要があります。それには現状をとことん調査することが求められます。何せこの規定が適用されるかどうかで、税額は「天国と地獄」と言うべき格差を生じます。ターゲットはマンション適地と路地状開発適地です。

 

具体的には、最新の住宅地図を入手の上、現状を徹底的に見て回ります。役所の開発記録簿等は大きな参考になります。その結果、規定の適用ができると考えられるのであれば、より一層詳細な調査を行います。そして、とことん調べた調査結果を申告書に添付します。それで税務署の否認の動きを封じてしまうのです。

 

また「有効利用」については、そうした現地調査に加えて、規定の背景についての妥当な考え方についても補足説明書に記載します。

 

これらを含め広大地の規定が適用されるかどうかには、不動産を見る目を中心にかなり高レベルの不動産の実力が必要となります。こうした実力を背景とする詳細な現地調査に基づき、果敢に減額規定を適用する。これにより初めて税額を適正に抑えた申告書を作成することができると考えます。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『相続税を減らす不動産相続の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税を減らす不動産相続の極意

相続税を減らす不動産相続の極意

森田 義男

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策の成否は「土地の相続税評価をいかに行うか」にかかっています。 しかし、専門家であるはずの税理士や金融機関の担当者等が、まったくと言っていいほど不動産を知らない状況にあるとしたら…。 本書では二十数…

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