前回は、「手抜き評価」が横行している不整形地補正の問題点などについて解説しました。今回は、評価規定の「曖昧部分」を節税に利用する方法などを見ていきます。

評価に「ブレ」が生じる原因は3つに集約

これまでの連載で土地の評価について解説をしてきましたが、評価にブレが生じる主な原因をまとめると、下記の3つの点に集約されます。

 

①評価規定の簡便さ

評価規定は不動産の素人が使用します。複雑なものは使い切れません。


②評価規定の拙劣さ

評価規定を作成した国税庁も不動産の素人です。その精度・正確性には期待できません。


③評価規定の曖昧さ

上記二点から、評価の細部や微妙な部分の規定は、放置されたり、粗っぽく定められたりしています。

最も価値が劣るはずの無道路地なのに・・・

上記の詳細については筆者の著書を参照していただきたいのですが、なかでも三番目の「評価の細部や微妙な部分の規定は、放置されたり、粗っぽく定められたりしている」ことについて、具体例をあげながら、いかに対応すべきかについて述べていきます。

 

(1)無道路地

世の中の土地で、ある意味で最も価値の劣るのは道路に接面していない無道路地ではないでしょうか(図表参照)。この土地は使いようがないからです(まあ実際にはそう多くあるわけではないかもしれませんが・・・)。

 

[図表]無道路地の例
[図表]無道路地の例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

路線価評価における無道路地の評価は、次のとおり、まったくもって論外なものとなっています。

 

すなわち、まず図表の点線で示した接道義務規定を充足する路地があるもの(つまり路地状敷地)と仮定して評価します。具体的には間口狭小補正率と蔭地による不整形地補正率を適用します(場合により奥行価格補正率も)。そしてその評価額に、あると仮定した点線の路地部分の評価額(路線価に路地の面積を乗じたもの)を控除することにより最終評価額を求めるわけです。

 

これによると、おそらく一般の土地を100とした場合に70〜75ぐらいの評価になるでしょう。

 

しかし、冗談ではありません。皆さん、この無道路地をいくらならお買いになりますか? せいぜい15でしょう。この値段で買って、道路側の地主と交渉による両地の合体を狙うわけです。評価規定のように路地部分だけを買い足すのもいいでしょう。

 

しかし、これに失敗すればすべてパーです。そもそもそんなことは両地の所有者はとっくに考えているはずです。これが無道路地で残されているということは、土地の合体等によほどの支障があると思わなければなりません。この失敗のリスクを考えれば「15がやっと」になるわけです。

 

ところで、図表の道路側にも土地があり、それが被相続人の配偶者の所有地であったとした場合を考えてみましょう。そうであれば、実質的にはこれは無道路地とは言えないでしょう。したがってこの場合には「両地が合体された土地を前提に評価すべき」といったことになりそうです。そしてほとんどの税理士はそう評価すると思います。

 

しかし、私はそのようなことはしません。あくまで無道路地として評価します(ただしこれが、評価引き下げを狙った意図的な所有関係の土地であれば話は別ですが)。理由は、評価規定のどこにもそのようなことは書かれていないからです。

 

もっと言えば、あの論外の評価規定は、こうした親族間の所有がかなりある(むしろこちらのほうが多い)ことを前提にした評価であると考えられます。また、仮に国税当局がこうした評価が気に入らないというのであれば、そうした規定を作ればいいわけです。

 

なお、書籍では接道義務規定に違背する「欠陥敷地」についても詳述してますが、実は路線価評価では、これも広義の無道路地であるとして評価します。すなわち間口1・8mの路地状敷地であるとすれば、間口が2mあるとして評価した上で、その後に20㎝部分の土地の評価額を控除せよというものです。

 

これはまったくの論外です。何よりこうした土地は世の中にたくさん存在します。親族間で所有しているものもほとんどありません。要するにこの拙劣な規定が、今日の相続税評価のレベルを象徴していると言うべきだと思います。

本連載は、2014年2月27日刊行の書籍『相続税を減らす不動産相続の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税を減らす不動産相続の極意

相続税を減らす不動産相続の極意

森田 義男

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税対策の成否は「土地の相続税評価をいかに行うか」にかかっています。 しかし、専門家であるはずの税理士や金融機関の担当者等が、まったくと言っていいほど不動産を知らない状況にあるとしたら…。 本書では二十数…

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