法人設立によって、個人の所得税率を抑えることが可能
川崎:法人設立には節税だけでなく様々なメリットがあります。かなり多いので驚かれるかもしれません。
<法人のメリット>
①個人の所得税率を抑えることができる
②信用をつくりやすい
③仕事の幅が広がる
④経費計上しやすい
⑤欠損金の繰越が長い
⑥所得の分散が可能である
⑦譲渡税がかからない
⑧相続税対策として有効である
メリット① 個人の所得税率を抑えることができる
川崎:では、メリットを順番に説明していきましょう。1つ目のメリットとして「個人の所得税率を抑える」ことができます。個人の場合は、超過累進税率といって、所得が高くなれば高くなるほど、税率も高くなっていくのです。ところが法人であれば税率は原則的に一定ですから、ある税率以上は高くならないという大きなメリットがあります。
さらにアベノミクスの一環で、法人税の税率そのものを下げようという動きがあります。平成28年税制改正大綱が、平成27年12月16日に公表されました。その改正内容のうち、平成28年度税制改正で行われる法人税改革は、法人課税を成長志向型に変えるため、法人課税ベースを拡大しつつ法人実効税率を引き下げることとしています。
法人税の基本税率が現行の23.9%から、平成28年度に23.4%、平成30年度は23.2%に引き下げられます。法人住民税や法人事業税などの地方税を含めた法人実効税率は平成28年度に29.97%、平成30年度に29.74%まで引き下げられます。
[図表]法人税率引き下げ
ジュン:国の政策として法人税率を下げていくということですか?
川崎:その通りです。企業の競争力を高め、前向きな設備投資や賃上げに、より積極的に取り組んでいくよう促すことを目的としています。
そのため、明らかに収入の多い人は法人の設立を考えます。皆さんが不動産投資を行うために法人を設立したとして、不動産の売り上げが法人に入るため、個人の所得税率を抑えることができます。現状で課税所得が900万円を超えているようであれば効果が感じられるはずです。
ジュン:該当しますね。
金融機関の信用を得やすく、資金調達も容易に
メリット② 信用をつくりやすい
川崎:メリットの2つ目は、個人よりも法人のほうが信用をつくりやすいということです。不動産投資には金融機関からの資金調達が欠かせません。もちろん、不動産投資に限ったことではなくて、例えば、ヨシトさんがいずれ子供向けのサッカー教室を事業としてはじめようとしたときなども、資金が必要になる可能性があります。
ヨシト:そうですね。
川崎:基本的に金融機関は安定性があって信頼ができる人や事業に融資を行います。その人がどれだけ信頼できる人物なのか・・・それを「属性」と言います。
仕事内容や年収、勤続年数、家族構成などから金融機関が判断するものですが、一般的には一部上場の企業に勤めるサラリーマンや公務員などが「高属性」とされ、派遣社員やアルバイトなど非正規社員が「低属性」とされます。
ジュン:そうなると我々のような人気商売は「低属性」になるのですね。
川崎:正社員や士業(弁護士、司法書士、他)など、安定的な職業に比べると、やはり属性は低く見られます。しかし、きちんとプラスになっている確定申告をしっかり行っていれば、それほど低くは見られません。ただし、法人と個人とで比べてみれば、法人のほうがより「しっかりしている」と評価を得ます。
タカ:それはなぜですか?
川崎:個人の所得税の確定申告、法人の決算を比べてみると、個人の確定申告書を見ていただくとわかると思いますが、薄くてペラペラです。ところが法人の決算書は分厚い本のようです。つまり情報量に大差があるため信用度も違ってきます。
それから世の中の流れとして、個人で信用を与えるよりも、法人で信用を与えたほうが有利なケースが多くあります。皆さんはまだお若いですが、個人の場合なら寿命があり、いつ亡くなるかわかりません。しかし法人の場合は、原則的にゴーイングコンサーン(継続企業)で、とりあえず永続する点でも大きなメリットといえます。
タカ:例えば、同じ売り上げであっても、個人と法人では、法人のほうが、信用度が高いということですか?
川崎:その通りです。その他のメリットでも出てきますが、個人に比べて業績がつくりやすいという側面があります。
ジュン:確定申告書よりも決算書のほうが良い内容にしやすいということですね。
ヨシト:それを金融機関に持っていくことで、有利に資産形成を進めることができるのですか?
この話は次回に続きます。