10年まで認められる法人の欠損金の繰越
メリット③ 仕事の幅が広がる
川崎:それに法人をつくっておけば仕事の幅が広がります。様々なことに使えるので、その点も大きく違います。例えば、先ほどのサッカー教室もそうですし、お笑い芸人のケースでは、ご自身のグッズをつくって販売したければ、その法人を使って販売します。
もっとも契約の問題もありますが、これもゴーイングコンサーンですから半永久的に残る事業です。これを個人でやった場合は、自分が生きている間の1回きりの事業です。そこが大きく違ってきます。
メリット④ 経費計上しやすい
川崎:続いてのメリットは経費を計上しやすいということです。
ジュン:確定申告でも経費がありますが、それとは違うのですか?
川崎:例えば、不動産所得で青色申告の人と法人では、経費の範囲が異なってきます。あくまでも個人の方の場合は、収入を得るための必要経費なのですが、会社の場合は将来を含めて、会社が支出した費用が経費になってきますから、範囲がその分だけ違ってきます。
ジュン:個人では認められない経費も、法人であれば認められるということですか?
川崎:そのようなケースは多いと思います。事例をあげれば、飲食費用がだいぶ違うのではないでしょうか。不動産賃貸業でいえば、飲食が必要経費というのはあまりないのです。ところが法人の場合は、営業活動の一環となり飲食は立派な必要経費になります。支出したとしても、その分どこかで稼げばいい話です。それはすべてOKです。
ヨシト:車はどうでしょう?
川崎:会社の事業に利用していれば大丈夫です。
メリット⑤ 欠損金の繰越
川崎:メリットには欠損金もあります。簡単にいうと赤字の扱いです。個人の欠損金は事業的規模であれば3年間は繰り越せます。法人は9年間です。その差も大きいです。
ジュン:個人と法人で3倍も差があるのですか?
川崎:さらに10年に延びることが明らかになっています。国としては延ばしたいのです。欠損金を繰り越すことによって決算書のコントロールが可能です。帳簿上は赤字だとしても資金繰り表上では黒字になっている可能性もあるので、資金効率が高まります。
メリット⑥ 所得の分散
これを「所得の分散」と我々は言いますが、所得の細分が可能なのです。例えば、その会社の役員の中に、自分の親族を入れておけば、役員としての報酬を受け取れます。
株主から委任を受けて、それで報酬を受けるわけですから、原則働かなくてもOKなのです。もっとも会社の経営に携わる必要は当然あります。それで所得は分散されていきます。
自動的に個人の所得が、どんどん分散されていくので、先ほども申し上げた超過累進税率を考えると、所得税を大きく圧縮することができます。
不動産を子供に引き継がせることも容易に
メリット⑦ 譲渡税がかからない
法人名義で購入した物件には譲渡税がありません。不動産の譲渡所得税とは、個人が不動産を売却したときの利益にかかる税金です。所有期間によって税率が変わります。
<譲渡所得税>
●短期譲渡売却した年の1月1日現在で所有期間5年以下であれば、所得税と住民税合わせて39.315%の短期譲渡税がかかる。
●長期譲渡売却した年の1月1日現在で所有期間5年超であれば、所得税と住民税合わせて20.315%の長期譲渡税がかかる。
このほか、2.1%の復興特別所得税がかかります。
メリット⑧ 相続税対策
まだ先のことだと思われるかもしれませんが、相続税対策においても、大きなメリットがあります。先ほども申し上げた不動産を個人から法人へ動かすことは非常に大変なことです。一つは、コストだけを見ていけば登記の費用がかかります。
もう一つは、不動産を取得した場合に、不動産取得税という、特別な税がかかってくるため、新たに不動産を動かすのは非常に厄介なのです。
ところが最初から法人の所有にしてしまうと、不動産の価値は株券に転換されています。株を移動することにより、結局は間接的にその不動産を移転することができます。
ジュン:例えば、僕の子供に引き継がせるのであれば、株券を譲渡とか贈与すればよいということですか。
川崎:はい。それゆえ、相続税対策の場合は法人を絡めると、うまくいきます。