一つの法人で「複数の事業」を行えるようにしておく
川崎:法人を設立にあたって、あらかじめ決めておくべきことがいくつかあります。ここでは設立時のポイントをご紹介しましょう。
<法人設立のポイント>
①法人の業務内容
②法人設立のタイミング
③役員・株主を決める
④決算期の決め方
⑤法人の種類と法人設立時にかかるコスト
①法人の業務内容
川崎:法人をつくるとき、どんな事業を行うのか決める必要があります。サラリーマンであれば、資産管理法人・資産保有法人といった形で不動産事業の専門の会社にするケースが多いと思います。
有名人の皆さんのような業態では、そもそもの本業と関連する事業と、不動産を主体とした資産形成を行う法人を別々につくるのか、一緒にしてもいいのか悩ましいところだと思います。
ヨシト:例えば、私がスポーツ事業を行った場合は、同じ会社でスポーツ事業部と不動産事業部があるというケースと、スポーツ事業と不動産事業の別々の会社をつくるケースがあるということですか。
川崎:そうです。これはどちらでも構いません。まずは一つの会社でいいのではないかなと思います。というのも、法人設立時に作成する定款の中に、いくつか事業目的があります。一番下に「その他これらの事業に類似するような事業」と必ず入れておくようにします。そこで全部入れてしまうことが可能になってきます。
お笑い芸人やミュージシャンであれば、自分のグッズをつくって物販を行うなど、不動産と異なるビジネスをすることも、その法人で構いません。一つの法人で複数の事業を行うことは問題ありません。
仮に一つの事業が赤字の場合にも他の事業の黒字と相殺されていくので会社経営には都合がよいのです。
自分の身内を役員に入れ、所得を分散できるようにする
②法人設立のタイミング
川崎:次に法人設立のタイミングです。サラリーマンの不動産投資では、個人でも融資が受けやすいため、個人の融資である程度物件を増やしてから法人になっていくケースが多いのですが、皆さんは自営業者なので、最初から法人を設立して、法人で実績をつくっていったほうが、先々やっていきやすいでしょう。
ジュン:それはなぜですか?
川崎:なぜかというと、先ほども申し上げましたが、不動産を個人から法人に移転するためには、登記の費用と不動産取得税、それから、不動産の値上がり益があれば、税の問題が出てきます。そこを最初から避けられるメリットがあります。
そうはいっても最初から設立しなければダメなのかといえば、全くそのようなことはなくて、普通の方は個人で行うケースが多くあります。賃貸事業をやる方が、必ずしも会社設立を目指すわけではなくて、副業のような形からスタートするケースが圧倒的に多いのです。
③役員・株主を決める
川崎:法人を設立するときの注意としては、「まず誰が社長をやるのか?」を決めなくてはいけません。その他、株主や役員はどのように考えるかです。これはケースバイケースなので、例えば、「前面に俺が出たい!」という人であれば、登記し代表取締役社長として実際に収入を得ていけばいいでしょうし、そうではない方は、会社の経営から離れればよいのです。
特に有名人だと、あまり表に出たくない人が多いので、信頼のおける親族の人を代表者にするケースが圧倒的に多いのではないでしょうか。
ジュン:うちでいえば、嫁が社長をするというイメージですか。
川崎:そうです。タカさんのように独身であれば親御さんなどがあげられます。その他、税金のことを考えた場合は、ある程度、自分の所得が分散できるような人たちを、役員に入れておきます。もちろん経営にタッチしてもらいます。
使用人というのは、実働に対して報酬が支払われます。ところが役員報酬というのは、株主からの経営の委任の対価なので、労働に従事しなくても少しは受け取れるということです。ただし、額はいろいろです。
ヨシト:それをすることで節税できるのですね。
川崎:そうです。でも、事業を拡大させるためには、節税だけが重要というわけではありません。会社をつくってからの絶対的な注意点をいえば、私の認識では、やはり収支をプラスにすること、つまり黒字にしたほうがいいと考えます。