(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍や物価上昇により、生活に苦しむ国民が増えている近年の日本。これまでの政府と日本銀行は、経済を回すために「お金の量」を増やす政策を行ってきました。しかし実際は、この政策によって日本経済が更に危機的な状況に陥っているのだと、思想家で投資家の山口揚平氏は指摘します。一体どういうことなのでしょうか?

少子化対策金が意味をなさない根本的理由

なぜ実体経済の側でもお金が増えなかったのか。多くの経済学者が考えたが、理由は単純である。いくらお金を刷っても、都市銀行などをはじめとする社会の上の階層は悲観的なためお金を流すことをせず、結果的に滞留し、国民のいる下のほうまで流れていかなかったからだ。

 

本来、産業の革新やイノベーションは階層の下側や端っこから生じる。つまり、社会階層の上側に位置する霞が関から産業が生まれるわけではないのだ。

 

では、社会階層の下側へ直接お金をばらまけばいいのだろうか。話はそう簡単ではない。下のほうは砂漠のように乾いており、ばらまかれたお金を吸収してしまう。お金が新たな富に変換される生産活動に回らず、単なる消費活動か貯金で終わってしまうのだ。

 

その意味で現在、岸田政権が進めようとしている少子化対策金(出産育児一時金の増額など)も意味をなさない。

 

本来重要なのは、社会階層の上から下へバケツリレーのようにお金が適切に流れつつ、それが消費ではなく、生産や創造活動に使われてゆく新たな仕組みを作ることだ。

 

こうした構造を無視してお金を刷ったことが円安にもつながっている。結果、損を被るのは国民に他ならない。図表2は、実体経済と金融経済の乖離が20年で約6.8倍に膨らんでいることを表している。ここまで差が開くと、破綻は近いと言わざるを得ないだろう。

 

[図表2]10年で14倍に広がった実体経済と金融経済の差

 

コロナは多くの悲劇をもたらしたが、社会にとっては一つの福音となった。それは、補助金・助成金の形で、下層に対して資金が直接供給されることになったからである。

 

タテ社会のロジックでは、お金を中心とするエネルギーはシャンパンタワーの上層部で堰き止められてしまい、下に降りてくることはない。

 

しかし皮肉にも、コロナウイルスによって奪われる生命と引き換えに、弱者救済という形で下層部にお金が流れることになり、経済的に一命をとり止めた人々がいるのも事実である。

 

蛇足になるかもしれないが、図表2のような兆円単位のグラフを見せられたところで、自分の生活とは関係ないとは思わないでほしい。大きくものを見ることで、小さな自分をうまくコントロールできるのだ。

 

本質をつかむために全体を俯瞰するのは重要だ。たとえば、自分の貯金が300万円あるとしよう。そのお金を増やすためにNISAを始めるかもしれない。だがそのNISAの資産の行く末を決めるのは、世界全体の実体経済である。

 

それは、地球の経済と自分の資産は相似形になっているからだ。マクロに地球規模で物事のありようを見ながら、ミクロな自分の範囲で実行に移すことが大切だ。

 

結局、自分が幸せであるためにも、周りも幸せでなくてはならない。自分だけ金持ちになっても孤独なだけだ。社会が豊かだから、自分も豊かになれる。全体を見つめて歪みを把握する。こうした見方を身につけてはじめて本質がわかる。

 

自分の知識がすべてであるわけがない。哲学=philosophyの“philo”は「(知を)愛すること」を意味する。自分が知らないことまで含めて愛する視点は、ソクラテスが説く「無知の知」にも通じる。知らないことを知っている状態は謙虚さをもたらし、賢明な判断の土台になる。

 

 

山口 揚平

ブルー・マーリン・パートナーズ株式会社

代表取締役

※本連載は、山口揚平氏による著書『3つの世界 キャピタリズム、ヴァーチャリズム、シェアリズムで賢く生き抜くための生存戦略』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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