お金を取り巻く世界の変化:偏在、分割、逆行
近年、お金を取り巻く世界の環境が大きく変わった。キーワードは「偏在」「分割」、そして「逆行」である。それぞれ説明しよう。
偏在 偏りすぎて破綻寸前の貨幣経済
まずは「偏在」。一般市民の収入はことごとく7割経済(売上が7割や8割に減ってなかなか戻らない状況)になったのに対し、億万長者の富はコロナ禍のわずか半年で44%増加した。
ここまで資産のありどころが偏ってしまうと、社会インフラとしても貨幣経済システムは成り立たなくなってしまう。ゲームで考えるとわかりやすいが、一人が圧倒的優位な状況では他のプレーヤーが冷めてしまう。ゲームに参加する動機づけができず、ゲームバランスが崩れて、革命放棄を誘発してしまう。
本来望ましいのは「偏在」ではなく「遍在」だ。つまり皆がやや等しくお金を持っている状態が、全体の成長を促す。今の貨幣経済は偏り過ぎている。
分割 社会は加速度的に階層化している
2点目は「分割」。アベノミクスから始まった異次元レベルのお金のばらまきは当然、円そのものの価値を薄めてしまっている。理屈では、今100円の価値は10年前の半分くらい(50円)になっている。だが、100円で買えるものはあまり変わっていない。
牛丼の値段も給料もあまり変化がない。これだけたくさんお金を作ってばらまけば、牛丼は300円から600円になっていなければならないし、給料も30万円から60万円に増えていなければならない。
しかし、そうはならない。すでに述べたように、社会は上下の二層構造になっており(分離)、刷ったお金は上の器に貯まって下には降りてこないからだ。だから下は下でやりくりし、上に貯まったお金は澱みながら不動産や株・奢侈品など不必要なものに回される。
お金の量が倍になり、本来なら2倍にしかならない不動産価格や株価が4倍になっているのに牛丼と給料が変わらないのは、上の層は4倍に薄まり、下の層ではお金の量が変わらないからだ。つまり、下の層にお金が降ってこない構造になっている。
この信用の薄まり方(希薄化という)が上の層で異常な状態になっている。
その背景には社会の層の分離がある。下の層になるほど人数が多いので選挙では有利だ。この論理によってアメリカではトランプ大統領が生まれた。資本主義では負けるが、民主主義(多数決)では勝てる、という仕組みがあったのだ。
しかし、その流れもまたこの2年で変わった。分離された下の層が今度は「分割」されたのだ。こうなると民主主義(多数決)でも手が出ない。バイデンの勝利はその証左だ。
この分割統治システムによって新しい階級奴隷社会が早晩生まれるだろう。加速度的に階層化される社会、その中で生き抜くためには牛丼と缶コーヒーで食ってゆけるなどと居直ってはならない。
Zoomの遠隔会議はポーカーだ。コロナ禍の水面下、パソコンの画面に映る笑顔の下で、相手は実は別のカード(副業・ボランティア・転職)を使ってより豊かなコミュニティへの逃走を図っている。
じわじわ進む階層化コミュニティのどこに自分がいるのかがわからなければ、それはあなたがカモになっているということだ。