出世すれば給料アップも…「面倒」と考える非管理職、多数
サラリーマンにとって、給与を増やすための正攻法はやはり「昇進」だろう。しかし、誰もが一律に上へ行けるわけではなく、上り詰めることができるのは、一部のエリートのみだ。
厚生労働省『令和5年 賃金構造基本統計調査』によると、課長(男性・平均年齢49.2歳)職の月収は50.0万円、年収では799.1万円。大企業(従業員1,000人以上)に限った場合は、月収は59.7万円、年収では998.9万円。
部長職(男性・平均年齢52.9歳)の場合、平均月収は60.4万円、年収では944.7万円。大企業の場合、月収は74.4万円、年収では1,246.9万円。
当然だが、高い給料を受け取るには、相応の苦労が伴う。役職がない、あるいはそれほど高くない従業員から見た、管理職のイメージは、必ずしもポジティブなものではないようだ。
ビジネスコーチ株式会社が全国の従業員数500人以上の企業に勤める20歳以上の非管理職と管理職に対して行った『昇進・昇格に対するポジションおよび役職別の意識の差についての調査』によると、役職なし、主任、係長の非管理職にある人たちは、管理職に対して「大変」「しんどい」「めんどくさい」というイメージを持つ人が多かった。
もし「課長」に就くとした場合の希望年収は、役職なし、主任、係長で大きな差はなく、「1,000万円前後(平均値)」を希望。「部長」に就くとした場合の希望年収も、役職による大きな差はなく「1,500万円前後(平均値)」だった。一方で「社長職」の希望年収を、非管理職および管理職(課長・部長・本部長)に聞いたところ、 非管理職は平均「3,812万円」、管理職は平均「4,588万円」を希望すると回答した。
ちなみに、非管理職・管理職それぞれに「社長になりたいと考える気持ち」を高めることは何かを聞いたところ、非管理職と管理職の回答には差異があり、非管理職の1位は「報酬やインセンティブ(26.6%)だったのに対し、管理職の1位は「仕事のやりがい・達成感(31.0%)」となった。
実際のところ、部長の年収「1,500万円」の希望が実現可能なのは、平均的な賞与(月収の4.5ヵ月分)を手にできるとした場合、月収90万円を超えるケースのみ。そのような高額な給与をもらっている部長はごくわずかだ。まさに勝ち組の勝ち組といったところか。
頑張って「上」へと突き進んでも、不可抗力で道を絶たれ…
しかし悲しいかな、頂点へと向かう急勾配の山道は、ときに突然途絶えてしまうこともある。本人の健康問題、社内政治、会社の組織変更――。
仕事を頑張らなければ出世できないわけだが、頑張るには体力が必要だ。若いときから無理を重ねていると、中高年になって跳ね返ってくる可能性がある。
出世する人は、人付き合いも人間関係作りもソツのない人が多いが、それでも敵は少なくない。うっかり足を掬われれば、出世の道も閉ざされてしまう。
そして、自身の力ではどうしようもない、会社の体制変更。やんごとなき理由で事情が変わり、そのあおりを受ければ、これまでの努力が水泡に帰す可能性もある。
「正直、役員も夢ではないと思っていました…」
そう語るのは、某企業に勤務する40代後半の男性。
「運もよかったのだと思いますが、上司や同僚に恵まれ、同期のなかでは一番早く昇進しました」
しかし、残念な理由で道は絶たれた。会社が吸収合併されることになったのだ。
「なにかの間違いかと思いましたよ」
組織再編で余剰が生じれば、配置転換、希望退職などが行われ、整理される場合もある。また、給与等はどちらか一方の労働条件に統一されるが、高いほうに揃えるパターンが多いとはいえ、絶対ではなく、新しい給与制度に変更されるケースもある。
この男性のケースでは、組織再編で部長のポストが不足して降格に。減給も決定した。
「居心地は最悪ですし、周囲の目も気になります。ですが、いまの段階で退職はできません。養わなければいけない家族がいますから。必死で転職先を探していますが、うまくいくかどうか…」
経済産業省『2022年 企業活動基本調査』によると、2021年度、組織再編を行った企業は1,805社。そのうち合併が668社、事業譲渡が237社、事業譲受が236社、会社分割が229社、株式交換・株式移転が227社となっている。
変化が激しいいまの時代、勤務先がずっと存続するとは限らない。苦労を重ねて上り続けても、足元から崩れしまうこともある。いざというときのことを考え、心のどこかに、いつも「転職」という選択肢を考えておくことが大切かもしれない。
[参考資料]
ビジネスコーチ株式会社『昇進・昇格に対するポジションおよび役職別の意識の差についての調査』
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