ダメ出し版「経験学習サイクル」が部下に与える悪影響
たしかに、今の世の中はノウハウであふれている。しかし若者に仕事を任せるときに、
「まずは経験。ダメ出しは後」
これを繰り返していると、部下は「でも」「だって」「どうせ」といった、「D言葉」を使うクセがついてしまう。
「でも無理です」
「だっていつもそうじゃないですか」
「どうせ自分が考えても否定してくるでしょ? やっても意味ないですよ」
このように、不貞腐れるのだ。
ダメ出し版の経験学習サイクルは、次のような4つのプロセスを踏むだろう。
①実際に経験する
②ダメ出しされる
③自信喪失する
④新しいことを試したくなくなる
マネジャーがとりあえず感覚で部下に仕事を投げると、部下も「とりあえずこなす」ことが目的になってしまう。これでは、いつまで経っても部下は育たない。
仕事を依頼する「前」にすべきたった1つのこと
したがって大事なことは、前提を揃えることだ。どこまでの仕事をしたらOKなのか。そのための仕事のやり方はどんなものがあるのか。それを言葉にして、事前に認識合わせをする。
では具体的にどうしたらいいのか? 心がけることはたった1つだけ。それは「見通し」を立てることだ。
「見通し」とは、ものごとの進展や将来を予測すること。具体的には、「初めから終わりまで」が明確に見通せるかが重要だ。
たとえば、分析の依頼をする場合、どのようなパラメータが重要か、それをどう分析し、結果をどうまとめるかという点を、部下に問いかけることで明確化させるのだ。
急かさず、否定せず、丁寧にやろう。困ったときには、掘り下げる質問を繰り返してみる。
「より具体的には何をすればいい?」
「たとえば何がある?」
具体的に掘り下げるには、この2つの質問は便利だ。
部下の考えを促すコツは、尋問にならないよう柔らかい表現で質問していくこと。そして適宜助け船を出すこと。上司自身もわからなければ、素直に伝えるのもいい。
「実は私もわかってないんだ。一緒に考えないか?」
「そうなんですね。お願いします」
この共同作業によって「見通し」が立つと、仕事の進行がより明確になり、部下も自信を持って取り組むことができる。
とはいえ、どんなに精度の高い「見通し」を立てたとしても、想定していなかったことは起こるものだ。それでも、「見通し」を良くすることで、未来への希望が持てる。前に進もうとする気持ちが晴れやかになるのだ。
横山 信弘
株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長
経営コンサルタント
※本記事は『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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