●トランプ氏のスーパーチューズデー圧勝を受けて、市場では大統領返り咲きへの警戒が強まっている。
●トランプ氏の公約は、関税引き上げ、自動車・エネルギー産業の保護、米国第一の外交復活など。
●米国第一の保護主義の基本路線は不変、市場への影響を考える上では当時の振り返りも重要。
トランプ氏のスーパーチューズデー圧勝を受けて、市場では大統領返り咲きへの警戒が強まっている
米国では3月5日、米大統領選挙に向けた候補者選びのため、民主、共和両党の予備選と党員集会が集中する「スーパーチューズデー」を迎えました。大方の予想通り、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領がそれぞれ圧勝し、本選での再対決に大きく近づきました。両党の候補者確定は2004年以来の早さで、11月5日の米大統領選挙の投開票日まで8ヵ月にわたる長期戦となります。
なお、各種世論調査の平均をみると、直近でトランプ氏の支持率は47%台となっており、バイデン氏の45%台を上回っています。日本の金融市場では「もしトラ(もしトランプ氏が米大統領選挙で勝利したら)」や「ほぼトラ(ほぼトランプ氏の勝利か)」という言葉がよく聞かれるようになり、トランプ氏が大統領に返り咲くことへの警戒の強さがうかがえます。
トランプ氏の公約は、関税引き上げ、自動車・エネルギー産業の保護、米国第一の外交復活など
米大統領選挙はまだ先ですが、今後の相場を見通す上で、事前にトランプ氏の公約の中身を確認しておくことは有益だと思われます。そこで、以下、トランプ氏の公約集「アジェンダ47」の要点を整理していきます(図表)。まず、通商政策では、ほとんどの外国製品を対象にした「普遍的基本関税」の導入や、中国の最恵国待遇の撤廃など、関税引き上げや対中政策が盛り込まれています。
次に、産業政策では、自動車産業の救済、パリ協定からの再離脱、低コストのエネルギーと電力の提供、自動車の排ガス規制の撤廃、石油などの生産者への減税など、国内の自動車産業やエネルギー産業を保護する方針を打ち出しています。また、外交政策については、ウクライナ紛争の停止、ウクライナ向け備蓄品費用の欧州への払い戻し請求など、米国第一の外交政策の復活を主張しています。
米国第一の保護主義の基本路線は不変、市場への影響を考える上では当時の振り返りも重要
インフラ政策では、生活水準を飛躍的に向上させる自由都市の建設、州間高速道路システム以来の交通大革命を掲げており、住宅建設費と新車購入費の引き下げ、若い親向けの子育て支援金も計画しています。そして、行政改革として、大統領が予算執行を停止できる「没収権」を復活させ、連邦政府の無駄な支出を削減し、米国民に減税で還元する方針を明示しています。
このほかにも、不法移民対策や治安対策など、アジェンダ47にはトランプ氏の幅広い構想が描かれていますが、米国第一の保護主義という基本路線は、トランプ政権時代と変わりません。そのため、トランプ氏が勝利した場合の市場への影響を考える上では、トランプ政権の4年間で株、為替、金利がどう動いたかを検証しておくことも重要と思われ、次回のレポートで当時を振り返ります。
(2024年3月8日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【もしトラ】支持率「バイデン超え」でザワつく金融市場…「もしトランプ氏が米大統領選挙で勝利したら」に備える【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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