●東証は1月15日、要請への取り組み開示企業一覧表を公表、最新分は2月15日に公表された。
●1ヵ月の短期間だが、プライム市場上場の開示済み割合は44%と、前回の40%から着実に進展。
●3月期企業の開示済み割合は50%超、投資家の関心は次第に企業価値向上の成果に移ろう。
東証は1月15日、要請への取り組み開示企業一覧表を公表、最新分は2月15日に公表された
東京証券取引所(以下、東証)は2023年3月31日、プライム市場およびスタンダード市場の全上場会社に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を行いました。その後、対応を進めている企業の状況を投資家に周知し、企業の取り組みを後押しするため、東証は2024年1月15日、要請に基づき開示している企業の一覧表を公表しました。
一覧表は、月末時点で直近のコーポレート・ガバナンス(CG)報告書に基づき更新され、翌月15日を目途に毎月公表されます。CG報告書に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」という文言があれば「開示済み」、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応(検討中)」という文言があれば「検討中」として集計され、いずれの文言も記載がなければ一覧表には掲載されません。最新分は2月15日に公表されました。
1ヵ月の短期間だが、プライム市場上場の開示済み割合は44%と、前回の40%から着実に進展
前回1月15日公表の一覧表では、プライム市場1,656社のうち、開示済みは660社(40%)、検討中は155社(9%)、記載なしは841社(51%)でしたが、今回2月15日公表の一覧表では、プライム市場1,655社のうち、開示済みは726社(44%)、検討中は173社(10%)、記載なしは756社(46%)となりました(図表1)。1ヵ月という比較的短い期間ではあるものの、開示は着実に進展していると判断されます。
この1ヵ月の変化についてもう少し詳しくみていくと、開示済みは66社増、検討中は18社増、記載なしは85社減となりました。内訳は、開示済みから検討中へ変更が1社、検討中から開示済みへの変更が1社、掲載なしから開示済みへの変更が66社、掲載なしから検討中への変更が18社となっています。また、1社が上場廃止となりましたが、掲載なしの企業でした。
3月期企業の開示済み割合は50%超、投資家の関心は次第に企業価値向上の成果に移ろう
なお、東証は2023年8月29日に一度、3月期決算企業を対象として、企業名を出さない形で開示状況を公表した経緯があります。3月期決算企業の開示状況については、その後、2024年1月15日にも参考資料として公表されましたが、2月15日には公表がありませんでした。そこで、2月15日の一覧表を基に、3月期決算企業を対象とした開示状況を確認してみます。
結果は図表2の通りで、開示済みは52%、検討中は12%、記載なしは36%となり、プライム市場に上場する3月期決算企業の開示済み割合は50%を超えてきました。一覧表は今後、毎月公表され、企業の取り組み開示は引き続き着実に進展していくと思われます。ただ、時間の経過とともに、投資家の関心は、開示の有無ではなく、中長期的な企業価値向上の実現に向けた取り組みが適切に行われ、具体的な成果を得られるかに移行するとみています。
(2024年3月7日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均が史上最高値を更新するなか、プライム市場上場の「開示済み」割合は“着実に進展”【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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