円安続く「米ドル/円」相場だが…直近の円の最安値「1ドル151.9円」を超える可能性は【国際金融アナリストが考察】

3月の「FX投資戦略ポイント」

円安続く「米ドル/円」相場だが…直近の円の最安値「1ドル151.9円」を超える可能性は【国際金融アナリストが考察】
(※画像はイメージです/PIXTA)

米国ではインフレ圧力の高まりを受けて米金利が上昇するなか、為替市場では米ドル高・円安が続いています。米ドルの「買われ過ぎ」、円の「売られ過ぎ」に対する懸念も強まるなか、2022年10月と2023年11月に記録した「151.9円」を超える円安となる可能性はあるのでしょうか。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が考察します。

円安地合いは続くが…円の最安値「151.9円」更新はなさそう

以上を整理してみましょう。米ドル高・円安は、5年MAなどが示す中長期的な行き過ぎの懸念や、円安阻止介入への警戒感、投機筋のポジションが示す米ドル買い・円売りの行き過ぎ懸念などから、ここ数年の米ドル高値を更新し、152円を大きく上回る動きにも自ずと限りがありそうです。

 

それでは「行き過ぎ」の反動で米ドル安・円高に大きく転換するかと言えば、そのためには米金利が大きく低下し、金利差米ドル優位が大きく縮小することが必要でしょうが、強い米景気が続くなかではそれも基本的には考えにくいでしょう。

 

ところで、大幅な金利差やリスクオン・ムードが強いという最近と似たような背景の下で広がった「円売りバブル」が破裂したのは2007年夏のことでしたが、それはサブプライム・ショックなど信用バブル崩壊に伴う株の暴落、それを受けたFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げへの転換がきっかけとなりました。

 

足元、日米などで「怒涛の株高」が広がっていますが、たとえば5年MAかい離率を参考にする限り、2000年のITバブルのような懸念はなさそうです(図表8参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表8]ナスダック総合指数の5年MAかい離率(1990年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

ただし、90日MAかい離率などを見ると、さすがに短期的な「上がり過ぎ」懸念は強くなっています(図表9参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表9]ナスダック総合指数の90日MAかい離率(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

その意味では「バブル崩壊」ではないものの、短期的な「上がり過ぎ」の反動での株安が広がるリスクは「米金利低下=米ドル安・円高」の可能性を考える上での手掛かりではないでしょうか。

 

3月は中下旬に日本と米国の金融政策決定会合が予定されています。一部にはこの3月にも日銀がマイナス金利解除を決める可能性を注目する見方もあるようです。

 

日銀はこれまでゼロ金利解除を何度か行いましたが、2000年8月はITバブル崩壊の株暴落が拡大するタイミングと重なり、そして2007年も信用バブル崩壊の株暴落が広がる直前のタイミングといった具合に、株価との関係で「不吉なジンクス」が続いている点は少し気になるところかもしれません。

 

以上を踏まえて、3月の米ドル/円の予想レンジを考えてみましょう。米ドル上値については、151.9円の米ドル高値を大きく更新しないと考えます。一方、米ドル下値についても株価の大幅な下落でも起こらない限り、米景気の強い状況のなかでは「米金利低下=米ドル下落」は限られそうです。

 

このため、3月の米ドル/円予想レンジは、147~152円で想定しています。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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