今回は、修繕積立金の「値上げ」にはどんな方法があるのかを解説します。 ※本連載は、須藤桂一氏の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』(保険毎日新聞社)の中から一部を抜粋し、マンション管理に様々な問題を抱える、いわゆる「ブラックマンション」の概要と、ブラック化の回避方法を見ていきます。

新築時は安く設定されるケースが多い修繕積立金

新築のマンションでは、修繕積立金が非常に安く設定されているケースが多く見受けられます。これもデベロッパーが早く完売させるための戦略のひとつで、築浅のマンションではたいてい安い金額で修繕積立金が設定されています。

 

しかし、そういうマンションの長期修繕計画表を見ると、数年おきに修繕積立金の値上げが設定されていて、年を経るごとに二次曲線を描いて金額が上がっていく計画になっています。

 

新築時の安い修繕積立金の設定では、大規模修繕工事への備えを充分に行うことはできませんので、当然そういう値上げが必要になってくるわけです。

 

つまり、新築時のマンションには管理費と修繕積立金を安く見せるカラクリが働いている、ということをまず理解しておく必要があります。そのようなわけで、管理組合ではどこかの時点で多かれ少なかれ修繕積立金の値上げに着手しなければなりません。

 

その値上げの方法には、次のような選択肢があります。

 

①均等に値上げをして積み立てていく方式。

②段階的に値上げをしていく方式。

③一時金方式。

④①〜③の併用プラン。

国土交通省が定めた「ガイドライン」を参考に検討

実際の例で見てみましょう。下記図表のグラフは中規模マンションの修繕積立金の段階的な値上げをシミュレーションしたものですが、多くのマンションでは、大規模修繕工事のための修繕積立金が赤字となるため、一時金の徴収や値上げをしないと破綻する仕組みになっているのが現状です。

 

[図表]実例中規模マンションの修繕積立金値上げシミュレーション

 

どの方法を採用するかは、それぞれのマンションの規模や管理組合の方針などで決まってくると思いますが、きちんと理解しておいていただきたいのは、修繕積立金は「貯金」である、という点です。

 

修繕積立金という言葉の通り、将来の大規模修繕工事や設備更新などを見据えて、長期間にわたって「積立」をしていくものですので、大切なのはそのときまでに必要な額が積み立てられることです。

 

そのために、毎月の修繕積立金を適正な金額で設定することが求められるので、その金額が安ければいいというわけでも、反対に高ければいいというわけでもないんですね。

 

ちなみに、国土交通省が平成23年に定めた「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」のなかには、修繕積立金の1戸当たりの月額が具体的に提示されています

 

現実的には、マンションの規模、設備、築年数などによって大きく異なりますので、あくまでも「参考値」として見るほうがいいでしょう。この国土交通省のガイドラインは、インターネットなどで確認することができますので、一度確認しておかれるといいと思います。

 

イラスト=田中マコト

本連載は、2015年4月21日刊行の書籍『忍び寄るブラックマンション危機とその回避法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

忍び寄るブラックマンション 危機とその回避法

須藤 桂一

保険毎日新聞社

金融破綻、年金破綻、そしてマンション破綻、著者はこの3つを「日本の三大破綻」と位置付けている。高すぎる管理費が修繕積立金を圧迫するなか、人口が減少していくニッポンで地方のマンションは資産価値を保ち続けることがで…

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