(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2024年2月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

1.概観

【株式】

2月の主要国の株式市場は、概ね堅調な展開となりました。米国株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利下げ観測が後退し、長期金利が上昇したものの、米国経済が軟着陸(ソフトランディング)するとの見方や、生成AI(人工知能)関連銘柄の成長期待から、ハイテク株を中心に上昇しました。欧州の株式市場は、ドイツDAX指数が最高値を更新するなど概ね堅調な動きとなりました。日本の株式市場は、日経平均株価が34年ぶりの最高値を更新するなど、大幅高となりました。大型株や米国のハイテク株の上昇を受けた半導体株などが上昇をけん引しました。中国株式市場は、政府資金の買い支えや空売り規制など株価対策を受けて、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに大きく反発しました。

 

【債券】

米国の10年国債利回り(長期金利)は、米経済指標が市場の予想以上の強さを示したことや、FRBが早期利下げに慎重であるとの見方が広がったことから上昇しました。ドイツの長期金利は、欧州中央銀行(ECB)の早期利下げ観測が後退したことや、米長期金利が上昇したことを受けて上昇しました。一方、日本の長期金利は、実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となり、日銀による早期の金融緩和修正観測が後退したことなどから低下しました。

 

【為替】

円の対米ドルレートは、FRBによる早期の利下げ観測が後退し、米長期金利が上昇したことを受けて、150円近辺に下落しました。

 

【商品】

原油価格は、米国経済が堅調さを示したことや中東情勢を巡る不透明感から、需給の引き締まり状態が続くとの見方が強まり、上昇しました。

 

2月の市場動向

2.景気動向

<現状>

●米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.3%と、堅調な個人消費にけん引され、2四半期連続で高い成長となりました。

 

●欧州(ユーロ圏)の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.2%でした。小幅ながら2四半期ぶりにプラス成長となりました。

 

●日本の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率▲0.4%と、2四半期連続でマイナス成長となりました。個人消費と設備投資が弱含みました。

 

●中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.2%と、前期から伸びました。ただし、名目GDP成長率は同+3.7%と実質を下回りました。

 

●豪州の7-9月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.1%と、前期からわずかに加速しました。政府支出が伸び、前期比は+0.2%でした。

 

<見通し>

●米国は、これまでの大幅な利上げに伴う景気抑制効果から、景気が緩やかに減速するとみられます。ただし、雇用が安定しており、個人消費が底堅いことや、企業収益が回復傾向にあることから、景気の急減速は避けられ、ソフトランディングに至るとみています。

 

●欧州は、ECBの金融引き締めによる景気抑制効果により、低成長が続くとみられます。ただし、インフレの鈍化による購買力の回復に加えて、労働力不足に伴う雇用の堅調、財政の支援などが景気を支えるため、腰折れはしないとみています。

 

●日本は、10-12月期実質GDP成長率が2期連続でマイナスとなり、1-3月期も自動車大手の生産中止の影響から減速が見込まれます。ただし、インフレの鈍化と賃金の上昇、経済対策の効果、インバウンド消費の増加、堅調な企業収益を背景に、緩やかな景気回復のパスに復調する見通しです。

 

●中国は、不動産市場の低迷や海外景気の減速で需要不足が続き、若年層の雇用悪化の影響などから個人消費も力強さを欠くことから、景気の回復ペースが鈍化するとみられます。ただし、政府が拡張財政を継続することから、急激な減速は避けられる見通しです。

 

●豪州は、中国景気の減速に加え、利上げの累積効果や、粘着質なインフレで家計の実質可処分所得が圧迫されることから個人消費が力強さを欠くとみられるため、景気が緩やかに減速するとみられます。

 

米国の実質GDP成長率

 

日本の実質GDP成長率

 

次ページ3.金融政策

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