※写真はイメージです。本文、書籍とは関係ありません。

今回は、阪神・淡路大震災を機に制定された「被災マンション法」について説明します。※本連載では、飯田太郎氏、保坂義仁氏、大沼健太郎氏の共著、『人口減少時代のマンションと生きる』(鹿島出版会)の中から一部を抜粋し、老朽化した第一世代のマンションの「終活」と「再生」の具体的な進め方について解説します。

建て替えが進まない「第一世代のマンション」

第一世代のマンションが終活と再生を考えるうえで有力な選択肢は建て替えである。しかし、これまでに実際に建て替えられたマンションはきわめて少ない。

 

国土交通省の調べによれば、震災による再建や耐震偽装事件(2005年)による建て替えを除くと実施準備中を含め227件である(2014年4月時点)【図表1】参照。これは1年間に10棟程度のペースであり、第一世代のストック約94万戸、約2万管理組合の1%程度が建て替えられたに過ぎない。

 

大地震発生時に倒壊するなどの危険があり、区分所有者や居住者だけでなく周辺地域の安全性も損なうおそれのあるマンションが放置されていることになる。マンションの建て替えの重要性、必要性が強調されるようになったのは、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で多くのマンションが重大な被害を受けたことによる。

 

【図表1】 マンション建て替えの実施状況(国土交通省、2014年4月現在)

 

震災後、比較的短期間で建て替えが進んだ理由

特に問題になったのは、マンションが全壊すると、区分所有の目的物である建物が全部滅失し、区分所有関係がなくなることである。この場合、民法の原則が適用されるため、所有者全員が合意しなければ再建も処分もできないことになる。

 

こうした事態を避けるため地震発生から2カ月後に「被災マンション法」が制定され、政令で指定された災害によってマンションが滅失した場合は、敷地共有者の集会で5分の4以上の賛成で再建を決議できることになった。

 

阪神・淡路大震災により建て替えや再建が困難との危機感が広がり、「被災マンション法」が制定されたことにくわえて、設計事務所などがコンサルタントになり建設会社やデベロッパーが協力して再建事業が進められた。

 

その結果、中破程度と判定されたマンションも含め比較的短期間の間に建て替えが進み、震災から5年が経過した1999年12月には、地震で何らかの被害を受けた2532棟(大破83、中破108、小破353、軽微1988)のうち115棟が再建または建て替えられた(※1)。

※1 東京カンテイ「阪神・淡路大震災から五年 被災マンションの復興状況」(http://www.kantei.ne.jp/news/report_1.php、2015年6月15日閲覧)

本連載は、2015年8月20日刊行の書籍『人口減少時代のマンションと生きる』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

人口減少時代の マンションと生きる

人口減少時代の マンションと生きる

飯田 太郎 保坂 義仁 大沼 健太郎

鹿島出版会

10人に1人が暮らすマンションに、やがて迫り来る住民とマンションの「2つの老い」。 管理会社任せにせず自分たちで考える、維持管理から資産管理、コミュニティ、そして「終活」まで。マンションとの生き方を真摯に考える一冊…

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