「老朽化問題」に正面から向き合う管理組合は少ない
マンションの草創期に建設、供給された第一世代(1980年以前の分譲)のマンションは、築年数が経過し「二つの老い」が進むとともにリスクも増える。
最大の課題はなんといっても耐震性の不足である。行政の啓発活動やマスコミ報道などによって、当事者である区分所有者の多くは自分たちのマンションが旧旧耐震時代か旧耐震時代に建てられたことを知っている。
しかし、区分所有者や管理組合による耐震改修や建て替えについての取り組みは少ない。
国土交通省が実施した2013年「マンション総合調査」の結果によると、1984年までに完成したマンションの場合、老朽化問題についての対策を議論した管理組合は65%あるが、建て替え・改修などの具体的な検討を行ったのは38.9%である。建て替えを決定したのはゼロ、建て替えの方向で検討継続中も1.9%に過ぎない。
自分たちのマンションが大きな問題を抱えていることは知っているが、この問題に正面から向き合う管理組合は少ないということである。
資産価値が失われるだけの「問題の先送り」
第一世代のマンションは94万戸(約2万管理組合)あるが、大部分は元気なうちに終活に取り組むどころか、問題解決を先送りしたまま「二つの老い」が進行し、自分たちの手では解決不能な状態になりかねないことを物語っている。
こうした第一世代のマンションであっても、管理実務を管理会社に委託していることもあり、日常管理は適切に行われ、外壁塗装など原状回復型の計画修繕工事も実施されていることが多い。このため外見上はさほど老朽化が進んでおらず、住戸の内装をリノベーションすることで市場価値を保ち、流通しているのが普通である。
人間の老化は本人が自覚し、家族もわかるかたちでやってくるため、否応なしに終活を意識することになるが、マンションの場合は問題を先送りしても、当面は区分所有者や居住者の日常生活に支障が少なく、徐々に資産価値が失われることになる。
区分所有者の財産と居住者の暮らしとも守るために、終活と再生に意識的に取り組む必要がある。第一世代のマンションの終活と再生の進め方と具体的な選択肢について考えることにする。
【図表1】 1984年までに完成したマンションの「終活」検討状況