※写真はイメージです。本文、書籍とは関係ありません。

今回は、終活を後押しするマンションの「敷地・建物一括売却制度」について説明します。※本連載では、飯田太郎氏、保坂義仁氏、大沼健太郎氏の共著、『人口減少時代のマンションと生きる』(鹿島出版会)の中から一部を抜粋し、老朽化した第一世代のマンションの「終活」と「再生」の具体的な進め方について解説します。

マンション建替え円滑化法の改正で生まれた新制度

2014年12月に施行された「改正マンション建替え円滑化法」で、旧耐震・高経年マンションの「終活」に大きな影響を与える重要な制度が創設された。耐震性が不足するマンションの敷地と建物を管理組合の特別決議でデベロッパーなどに一括売却できる仕組みである。

 

これまでもマンションは区分所有者の五分の四が同意すれば建て替えることができたが、建物の解体や敷地を一括売却するためには全員合意が必要だった。今回の法改正によりデベロッパーなどにマンションと敷地を一括売却することが、建て替えと同じような手続きでできることになった。

「運命共同体」的な関係からの解放

従来、老朽化したマンションの再生は、建て替えも改修もあくまで区分所有者による事業として行うことが原則だった。たまたま同じマンションを購入した区分所有者は、「運命共同体」的な関係のなかに置かれていたことになる。今回の法改正により耐震性不足の第一世代のマンションの区分所有者は、デベロッパーなどに一括売却することで「運命共同体」的な関係から解放されることになった。

 

管理組合が一括売却決議をするためには、知事や市長などによる耐震性不足の認定、デベロッパーによる代替住居の斡旋などを含む買い受け計画の作成と知事や市長などの認定といった手順は必要になるが、デベロッパーが建設する建物の容積率割り増しや、購入した敷地にマンション以外の建物をつくることもできるといったインセンティブもある。【図表】に一括売却制度の概要を示す。

 

【図表 一括売却制度の概要】

 

①知事や市長などによる耐震性不足マンションの認定

②管理組合による再生や一括売却の検討

③デベロッパーなどによる買い受け計画(買い受け金額、代替住宅の提供、土地の利用など)の作成と知事や市長などによる認定

④管理組合総会で、区分所有者数と議決権数の各五分の四以上の賛成で、マンションの敷地と建物の一括売却を決議

⑤一括売却決議に合意した者などの四分の三以上の同意と知事や市長などの認可を受け、マンション敷地売却組合を設立

⑥決議に反対した区分所有者に対し、売却組合が区分所有権および敷地利用権の売り渡しを請求

⑦知事や市長などによる認可を得て売却組合が分配金取得計画を作成

⑧売却組合がマンションと敷地利用権を取得

⑨売却組合が買受人にマンションと敷地利用権を売却

⑩売却組合が区分所有者への分配金、借家権者に対する補償金を支払い

本連載は、2015年8月20日刊行の書籍『人口減少時代のマンションと生きる』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

人口減少時代の マンションと生きる

人口減少時代の マンションと生きる

飯田 太郎 保坂 義仁 大沼 健太郎

鹿島出版会

10人に1人が暮らすマンションに、やがて迫り来る住民とマンションの「2つの老い」。 管理会社任せにせず自分たちで考える、維持管理から資産管理、コミュニティ、そして「終活」まで。マンションとの生き方を真摯に考える一冊…

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