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“イレギュラーな動き”が短期金利上昇につながっている

では、今回の量的引き締め(QT)が、本当に[前掲図表4]のとおり「MMFが主役」なのかをデータで確認してみます。

 

[図表5]の【左側のチャート】が米銀の動きです。

 

[図表5]米銀保有の中銀準備預金と米国債/MMF保有の中銀預金と米国債
[図表5]米銀保有の中銀準備預金と米国債/MMF保有の中銀預金と米国債

 

前回の量的引き締め(QT)の局面では、市中銀行の準備預金が減り、米国債保有が増えています。イメージどおりの量的引き締め(QT)です。

 

そして、【同じ左側のチャート】を見ると、今回の量的引き締め(QT)では、イメージや前回の実際とは真逆で、①市中銀行保有の国債はむしろ減り、②準備預金(マネー)は増えています(あるいは横ばいです)。

 

「保有債券と商業用不動産貸出という2つの保有資産の含み損」と「低い預金金利」から生じた①銀行危機(=預金の流出;取り付け)があり、これに対処するために、②米連邦準備制度理事会(FRB)が銀行に緊急的な担保融資(BTFP)を行ったためです。

 

すなわち、銀行からマネーは減っていませんから、ここから短期金利が上昇する流れは考えにくくなります*。

 

* もちろん、米銀全体としては準備預金(マネー)が減っていなくても、同部門のなかで信用力が低い銀行から、信用力が高い銀行に資金がシフトしていれば、短期金利は上昇します。ただし本稿では、個別行の資金繰りというミクロにではなく、中央銀行、市中銀行、MMFを含む全体のマネーと、巨額の資金調達を行う政府というマクロに焦点を当てています。いずれにせよ、短期金利が上昇してきたということは、資金の枯渇が近いということです。しかも、FRBはBTFPを3月で停止・終了する予定です。

 

話を戻すと、他方で、【同じ図】の【右側のチャート】で示すMMFの動きを見ると、今回の量的引き締め(QT)の局面では、FRBへの預金(リバース・レポ;市中銀行にとっての準備預金に相当するもの)が減り、米国債の保有が増えています。

 

(「ひび割れ」がどこで生じようとも、マクロ的には)マネーはここから吸収され、それが最近の短期金利の上昇につながっていると考えられます。

 

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重見 吉徳

フィデリティ・インスティテュート

首席研究員/マクロストラテジスト

 

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