前回は、土地の評価額を下げる「広大地評価」が認められた事例を取り上げました。今回は、都市計画道路予定地等の軽減評価について見ていきます。

都市計画図を確認する税理士なら見逃すはずはないが…

自治体のウェブサイトを見ると、都市計画図を閲覧することができます。都市計画図には、用途地域などさまざまなことが表示されています。その中には都市計画道路も表示されています。

 

これは将来、都市計画の中で、ここに道路を造るという計画を示したものです。しかしその計画はいつ実行されるかは決まっていません。20年後かもしれませんし30年後かもしれません。予算が付いたときに実行するということになります。

 

それまでの間は土地を利用することができますが、一つだけ規制があります。

 

将来は道路を整備する予定ですから、そのときに壊しやすい建物でないと自治体は困ります。ですから解体しにくいものは建てられないことになっています。例えば鉄筋コンクリートの建物は建てられません。3階建ての建物も建てられません。そのような規制があります。

 

となると、都市計画道路の予定地になっている土地は時価が下がることになり、減価要因として規定されています。土地の評価をする際に、都市計画図を確認する税理士ならば、都市計画道路の予定地を見逃すことは少ないでしょう。

土地区画整理事業を施行する区域も評価減の対象

しかし、じっくり見ていくと、それ以外にも評価を下げる要因が隠されていることがあります。私の経験した例では、東京都世田谷区の都市計画図にそれがありました。

 

一般的に都市計画図は一枚にさまざまな情報が詰め込まれていますが、世田谷区の場合は2枚に分かれていました。2枚目に、土地区画整理事業を施行する区域の表示があったのです。

 

土地区画整理事業というのは、昔ながらの狭い道路がある街を整備して住みやすくしようという事業です。道路を碁盤の目のように整備し直します。

 

世田谷区は広範囲に渡り、土地区画整理事業を施行する区域を定めています。私が更正を頼まれた土地も、土地区画整理事業を施行する区域に該当していました。

 

調べてみると、土地区画整理事業を施行する区域は碁盤の目のように計画道路があり、その道路にかかっていると、都市計画道路にかかっている土地と同じ規制がかかっていたのです。ということは、同じ評価減が使えるはずです。通常の地主は同じ地域に複数の土地を持っており、この地主さんも同様でした。

 

結局、20ヵ所ぐらいある土地のうち3分の2ぐらいがこの減価要因の適用漏れを起こしていました。全体で約3000万円評価額が下がり、約1200万円の相続税の還付が認められました。

 

通達を杓子定規に見ただけでは、都市計画道路予定地と書いており、他に応用することは思いつきませんが、実はそうではなく、通達がどのような趣旨で決められているのかを考えることが重要です。そうすれば、その評価減を応用できるケースが見えてきますので、それを適用して申告をすれば、税務署も認めてくれるのです。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『相続税から土地を守る生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税から土地を守る生前対策

相続税から土地を守る生前対策

下坂 泰弘

幻冬舎メディアコンサルティング

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