前回は、「地目」の変更で土地の相続税評価額を下げる方法を説明しました。今回は、土地の相続税評価額を下げる「広大地評価」が認められた事例を紹介します。

商業施設用地として売却が見込める土地は適用外

広大地を適用できれば、土地の評価額を大きく下げることができます。しかし、判定に悩み、適用しないまま申告しているケースが少なくありません。結果的に必要以上の相続税を支払っています。

 

私が更生の請求をしたこのケースもそうでした。面積からすれば広大地の条件を満たしていましたが、担当した税理士は適用せずに申告をしていました。その理由が二つ考えられます。

 

1.隣地に旗ざお地の宅地分譲があった

2.該当の土地には近年新しく建てられた商業施設があった

 

【図表】広大地の評価漏れ

 

広大地評価の適用判定では、敷地内に道路を設ける必要がなく、旗ざお地として売却できる土地には適用することができません。また、商業施設用地として売却が見込める土地も適用外です。

 

私はまず、近隣の開発事例を調べました。その地域でどんな開発があったのかは、自治体で確認することができます。調べてみると、付近には商業施設が多くありましたが、そのほとんどが評価対象地に比べて著しく大きな土地のものでした。評価対象地と同じくらいの大きさの土地では、商業施設の開発と宅地分譲の開発が同数くらいでした。同数くらいですと、税務署も商業施設が最有効使用だと断定することはできません。

 

開発が行われた年代も確認しました。数は半々でも最近の事例に商業施設が多いと、商業施設が最有効使用と言われ、否認される可能性があるからです。この地域では最近になって商業施設が増えて宅地分譲が減っているわけではなく、むしろ微増ですが宅地分譲が増えている傾向にありました。

 

ただ、申告した土地には近年、商業施設が建てられています。確認したところ、この土地はそもそも20年以上前から商業施設が建てられており、近年その同一借家人に対して建て替えをしたのにすぎませんでした。つまり、相続時において、商業施設用地として売却できる可能性は少ないわけです。

広大地評価が認められ、約6250万円の評価減に

もうひとつ、隣地で分譲された旗ざお地の問題もありました。これもこの地域の宅地分譲の開発事例を検証すると、旗ざお地として分譲されたケースはありませんでした。これは、開発を行う規模の分譲では、旗ざお地の需要がないという証明になります。

 

隣地が旗ざお地になったのは、面積の問題であろうと推測できました。全体の面積が400平方メートル以下だったので、開発の対象となりません。こういう小さな土地の場合は、多少の無理があっても旗ざお地の形で販売してしまうことがあります。

 

これらの事を資料にまとめて税務署に提出し、更正の請求をし、結果、広大地が認められました。約6250万円の評価減となり、約1900万円の相続税が還付されたのでした。更正をする際は資料のまとめ方も重要で、それにより結果も変わってきます。税理士の腕の見せ所というわけです。

 

今回のケースも数だけを比較すれば、宅地分譲の開発よりも商業施設の開発の方が圧倒的に多数でした。それをそのまま税務署に提出してしまえば、広大地は認められなかったでしょう。しかし、同規模の面積の土地に限定して比較したところ、前述のようにほぼ同数という結果になるのです。

 

年代ごとにまとめるという方法もあります。たとえば分譲マンションが多い地域の場合、数だけを調べれば宅地開発よりも分譲マンションのほうが多いケースも少なくありません。そのようなときには、マンションの開発と宅地分譲の開発の年代を比較し、過去10年、15年などに区切って比較し、宅地分譲の開発が多いような区切りで、「最近は宅地開発が主流」という主張を行います。

説得力の強い要素をいかに見つけ出すかが重要となります。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『相続税から土地を守る生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税から土地を守る生前対策

相続税から土地を守る生前対策

下坂 泰弘

幻冬舎メディアコンサルティング

税制改正により、土地を失うリスクは飛躍的に増大しました。地主の方にとって相続税対策は深刻な問題です。そのため、さまざまな相続税対策をしている方も多いですが、その対策には大きなリスクを伴うものもあります。 相続税…

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