前回は、都市計画道路予定地等の軽減評価について説明しました。今回は、高すぎる評価額を見直して相続税還付を受けた事例を見ていきます。

市街化調整区域の中には、評価額が高すぎる土地も…

これまで説明してきたのは、市街化区域の土地の評価方法ですが、市街化調整区域で倍率評価の土地でも高い評価額となり、その適用を誤っていた事例を紹介しましょう。

 

市街化調整区域の中にも家が立っている場合があります。なぜ、そのようなことが起きるのかといえば、市街化調整区域と市街化区域を区別する前から家が立っていた場所なのです。

 

そのような土地は、市街化調整区域でも宅地として売却でき、建物を建ててよいことになっています。土地の評価をするときには、固定資産税の評価額に倍率(おおむね1・1倍)を乗じて算出するのが一般的です。

 

問題となるのは、田畑をやめて駐車場や資材置き場としているケースです。この場合、固定資産税の評価額は宅地と同水準の雑種地となる場合が多く、評価額は高くなります。しかし、これらの雑種地には建物を建てられないので、固定資産税の評価額で売買することはほぼ不可能です。そのため通達では、このような土地については宅地並みの計算をした後に0・5を乗じていいことになっています。

 

私が更正の依頼を受けた土地は中古車売場となっており、事務所も調整区域の宅地と同水準の固定資産税評価額が付されていました。その評価額に宅地と同様の1・1倍を乗じていたため、高い評価額となっていたのです。

 

調べてみると、その事務所はブロックの上に置いてあるだけで建物ではなく(建物とは、土地に固定したものをいいます)、当然その土地は宅地として売買できない土地でした。結果、1・1倍の後に0・5を乗じて(つまり半額)更正をしました。評価額で約1500万円の差が生じ、約440万円の還付となりました。

 

調整区域では、他にも幹線道路の近くにある土地も、評価の間違いを起こしやすいものです。市街化調整区域に幹線道路がある場合、幹線道路の両側を開発をするために市街化調整区域でも建物を建てられる場合があります。ロードサイドの商業施設などを造る場合です。

 

そのような場合、建物が建てられるようになった土地とは別に、駐車場が設置されている場合があります。その駐車場は建物を建てられないままです。しかし駐車場として使っているので、固定資産税評価額は非常に高くなっています。固定資産税評価額にそのまま倍率をかけて土地の評価をしてしまうと、高すぎる評価額になってしまいます。

 

調整区域の評価では、このように、宅地の要件を満たしているか判断するのが大切になってきます。

隣接地の測量図で「なわ縮み」を証明したケース

近隣の測量図を利用して、測量図のない土地のなわ縮みを証明し更正した事例もあります。

 

この土地は、測量図のある土地とない土地が合筆され、一つの土地になっていました。結果、土地の半分に測量図がないという状態だったのです。

 

しかし、調べてみると、隣地の測量図はすべて揃っていました。その測量図のすべてを正確に作図すれば、測量図のない土地の部分の正確な面積がわかります(実際はCADを使用しコンピューターで作図)。

 

結局、公簿上では約1100平方メートルの土地が実際には940平方メートルしかないことがわかったのです。土地の面積が160平方メートル違うと、評価額は大きく違ってきます。路線価が15万円だったので、単純計算で2400万円の差です。広大地の適用を受けていたので、実際の評価差額は1400万円程度の違いとなりました。税額で400万円の還付となりました。

 

このように、評価する土地に測量図がない場合でも、正確な地積を求めることができる場合があります。そのためには、評価する土地に隣接する土地の測量図を取得したり、分筆前の測量図を取得したりする必要があります。

 

私の感覚では、実務でここまで徹底的に調べている税理士は皆無ではないかと思います。では、なぜ私がここまでやるかというと、土地の評価は市場価格であり、実際に市場に出して売却するときにはここまで調べるのが当たり前と考えているからです。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『相続税から土地を守る生前対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税から土地を守る生前対策

相続税から土地を守る生前対策

下坂 泰弘

幻冬舎メディアコンサルティング

税制改正により、土地を失うリスクは飛躍的に増大しました。地主の方にとって相続税対策は深刻な問題です。そのため、さまざまな相続税対策をしている方も多いですが、その対策には大きなリスクを伴うものもあります。 相続税…

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