前回は、堅実な資産運用に「株式投資」が向いていない理由について取り上げました。今回は、公的年金のポートフォリオのリスク資産比率が増大した理由について見ていきます。

低リスクの国内債券比率を67%から35%に引き下げ

公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が資産運用の中身(ポートフォリオ)を変更したことから、個人も株式投資をすべきだという人もいます。

 

以前のGPIFは、図のように資産の67%を国内債券で運用しており、国内株式は11%にすぎませんでした。しかし、現在のポートフォリオは、リスクの低い国内債券を35%に下げ、国内株式を25%、外国債券を15%、外国株式を25%にまで引き上げ、リスク資産が大幅に増えています。

 

公的年金の運用は、高いリスクをとって高いリターンを狙うものではありません。堅実に資産を増やしていくことを目標としています。その公的年金がここまで株式で運用する比率を増やしたのだから、個人も株式で運用すべきだという説を唱える人が出てきたのです。

GPIFがヘッジファンドの餌食に!?

しかし、GPIFのポートフォリオの変更には、実は政治的な背景があります。純粋に公的年金の運用効率を考えているというよりも、アベノミクスによって日本の株価対策に利用されたという側面が大きいといえるでしょう。

 

専門家の中には、GPIFがヘッジファンドの餌食になると指摘する人もいます。GPIFは約130兆円の運用資産を持っていますから、その一部だけを株式市場に振り向けたとしても、それなりのインパクトを与えます。

 

ポートフォリオの変更は事前に公表していますから、GPIFの購入によって日本の株価が上昇することを見込んだヘッジファンドが先回りをして買い、実際にGPIFが購入して株価が上昇したところで、ヘッジファンドは売り抜けて利益を得ようとしているのではないかというのです。

 

そうなれば、ヘッジファンドの売りによって、GPIFの保有資産が値下がりすることも考えられます。このような状況の中で、個人も株式投資に積極的に参加すべきだとは、とうてい言えないのです。

 

【図表】GPIFのポートフォリオの変更

本連載は、2016年5月20日刊行の書籍『30歳から定年までで2億円つくるほったらかし資産運用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。本書に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本書の内容は著者の個人的な見解を解説したものであり、著者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本書の情報を利用した結果による損害、損失についても、幻冬舎グループ、著者並びに本書制作関係者は一切の責任を負いません。投資のご判断はご自身の責任でお願いいたします。

30歳から定年までで2億円つくる ほったらかし資産運用術

30歳から定年までで2億円つくる ほったらかし資産運用術

宮園 泰人

幻冬舎メディアコンサルティング

年収減少、増税、年金不安・・・サラリーマンの老後はどん底貧乏間違いなし!! 「下流老人」「老後破産」・・・サラリーマンの多くが、老後の生活に不安を抱えています。定年後の安定した生活には最低1億円、ゆとりのある生…

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